名古屋工業大学は2017年12月5日、同大学の渡辺義見教授らの研究グループが、従来材と比べ内部欠陥が少なく、微細な組織を有する高品質な造形品を製造できる、積層造形(3Dプリンター)に特化した新規金属粉末の開発に成功したと発表した。これまで積層造形が困難とされてきた金属種にも適用可能な手法だ。
デジタルデータから直接製品を製造する積層造形技術は、製造工程が削減できるとともに、製造困難とされてきた複雑形状品も製造が可能だ。しかし、粉末床溶融法等の粉末の溶融と凝固を工程に含む積層造形法では、造形品中に形成される内部空孔や、粗大で不均一な内部組織による品質や力学特性の低下、造形可能な金属種に制限があるといった技術的な課題がある。
今回同研究グループでは、鋳造アルミニウムなどの組織微細化に利用される異質核生成理論を積層造形技術に応用した。この手法は、母材金属と異質核粒子を混合し、母材金属の初晶に対して界面マッチングが良く、かつ母材金属より高い融点を持つ異質核粒子が母材金属の凝固時に結晶成長の核として働くことで、組織の微細化が達成されるものだ。
研究では、航空機部材等に用いられるTi-6Al-4V合金を母材金属とし、異質核粒子としてTiC粒子を選定して実験を行った。それぞれの粉末を予め混合して作製した積層造形用金属粉末を新たに開発し、同粉末を用いて、粉末床溶融法により積層造形品を作製した結果、母材金属粉末のみで造形した従来品と比べて相対密度が向上するとともに、初晶粒組織の微細化が確認された。
この結果から、今回開発した積層造形用金属粉末を用いることで、より高品質な積層造形品の製造が可能であるとともに、造形時に必要なレーザーの出力を低減できることもわかった。これにより、造形プロセスの省エネルギー化や、低品位なレーザーでも高品質な造形体の製造が可能であることが示唆された。
今後同グループでは、純アルミニウムなど積層造形技術に応用が期待される他の金属や合金でも同様の効果があることを確認するとともに、添加する異質核粒子の形状やサイズ、添加量を最適化し、さらなる性能発揮を求めていきたいとしている。