筑波大ら、有機電子光デバイス用高分子半導体を簡便に合成できる技術を開発 環境負荷も低減

合成した高分子を用いて実際に作製した有機EL素子の動作写真。中央部の淡緑色に光っている部分(2mm×2mm)が発光素子。

筑波大学は2018年1月5日、同大と物質材料研究機構との共同研究グループが、有機電子光デバイス用高分子半導体を合成するための新技術を開発したと発表した。従来より簡便な上、省資源で環境負荷も小さいという。

有機電子光デバイスの材料の1つであるπ共役高分子は、これまでクロスカップリング反応を利用して合成するのが主だった。この反応は適用範囲が広く、多様な高分子合成が可能だが、スズやホウ素、ハロゲンなどを官能基として利用することから、それらの官能基を持つ原料(モノマー)を事前に合成する必要があった。一般的に、合成工程数が増えることで、使用する試薬の量が増加するだけでなく、時間と労力の負担も増大する。さらに、これらの官能基に関わる副生成物を、反応後に分離・除去しなければないことから、大量の溶媒を使用するとともに多量の廃棄物が生じるという課題があった。

同研究グループはこの課題を克服するため、π共役高分子の合成において新しい重合法を開発した。新たな重合法では、原料となる2種類の芳香族化合物のC(炭素)-H(水素)結合を反応点としてクロスカップリング反応を行う。これにより、モノマーには、従来必要だったスズやホウ素、ハロゲンなどの官能基が不要となり、合成ステップを少なくとも2工程削減できるようになった。

また、反応条件を検討することで、酸素を最終酸化剤とする合成法も確立した。この合成法では、酸化剤が効率よくリサイクルされるとともに、主だった副生成物は無害な水となる。このため、試薬の使用量と廃棄物が大幅に削減できる。

新たな重合法では、機能の異なる2種類の材料をモノマーに用いると、それぞれの機能を合わせ持つ高分子半導体を作ることができる。今回は、電子輸送性モノマーと正孔輸送性モノマーとを重合することで、電子・正孔両電荷輸送性型の高分子半導体の開発に成功した。これを薄膜化しデバイスを作製したところ、電子・正孔が再結合して発光する有機EL素子の材料として機能することが確認できたという。

同研究グループによると、この合成法は製造プロセスの省資源化にも適した手法であることから、さらに反応を効率化し汎用性を高めることで、高機能な最先端材料の合成、さらには有機電子光デバイスの普及に資する製造技術として期待できるという。

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