- 2022-10-21
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- Applied Physics Letters, James Hwang, TSMC, アニール(加熱処理)装置, コーネル大学, シリコン, トランジスタ, 半導体, 学術, 定在波, 電子レンジ
米コーネル大学の研究チームが、台湾の半導体製造受託企業であるTSMCと協力し、半導体業界が直面している課題を克服する、電子レンジを改良したアニール(加熱処理)装置を開発した。同技術は、次世代の携帯電話やコンピューター、その他の電子機器の半導体製造に役立つという。同研究成果は2022年8月3日、「Applied Physics Letters」に掲載された。
マイクロチップに必要なトランジスタを製造する際、リンをドープしたシリコンをアニールし、リン原子を正しい位置にして電流が流れるように活性化する必要がある。しかし、マイクロチップの微細化が進んだことで、所望の電流を得るには、より高濃度のリンをドープしなければならなくなった。平衡溶解度を超えてドープしたシリコンは、膨張してひずんでしまい、空孔を伴ったリンでは、安定した特性を持つトランジスタを作れないという問題が生じている。
米コーネル大学のJames Hwang教授は、電子レンジを改良し、マイクロ波を使って過剰にドープしたリンを活性化することに成功した。従来のマイクロ波アニール装置は「定在波」を生じ、ドープしたリンの活性化を妨げていた。電子レンジを改良した同手法では、定在波を生じる場所を制御でき、シリコン結晶を過度に加熱して破壊することなく、空孔を伴ったリンを選択的に活性化できる。
同技術は、マイクロチップに使用するトランジスタの形状を変える可能性がある。最近、メーカーはトランジスタの密度と制御性を高めることができる、ナノシートを垂直に積み重ねる新しいアーキテクチャで実験を始めている。同技術によって可能になる過剰ドープは、新しいアーキテクチャの鍵を握っていると言われている。
「現在、数社のメーカーが3nmの半導体デバイスを製造していますが、本技術を用いて、TSMCやSamsungのような大手メーカーが、わずか2nmに縮小する可能性があります」と、James Hwang教授は語った。