- 2018-3-31
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Nature Communications, Stephen Long, イリノイ大学, 光合成蛋白質(PsbS), 遺伝子操作
農作物の栽培には大量の水が必要で、地球上の真水の90%は農業に使われているという。世界の人口増加に伴って食料を増産する必要があるが、そのための水資源は不足している。水不足から、やがて大規模な食料不足になることは避けられないといわれており、収穫量あたりの水の必要量を減らす必要がある。
この問題への対策として、イリノイ大学は、作物を遺伝子操作して収穫量を減らすことなく、育成に必要な水の量を25%減らすことに成功した。研究成果は、『Nature Communications』誌にて公開されている。
葉の表面には気孔と呼ばれる小さな穴が存在し、植物は気孔を通して光合成のための二酸化炭素を吸収するが、同時にここから水分も蒸散する。イリノイ大学は、全ての作物に共通する1つの遺伝子発現(遺伝子情報に基づいて蛋白質が合成されること)を変更することによって、光合成蛋白質(PsbS)を調節し気孔を部分的に閉じて水の蒸発を抑え、必要な水分量を減らした。
研究を率いるのは、イリノイ大学植物生物学のStephen Long教授。同氏は「過去60年間にわたって、農作物の収穫効率は改善されてきた。しかし、1トンの穀物を作るために必要な水量は変わっておらず、大半の人はこれを変えることはできないと考えていた。農作物が必要とする水分量を減らすという我々の理論が実証できたことは、人々にとって大切なゴールへ向けた研究への扉を開けるものだ。」と述べている。
研究チームは以前にも、遺伝子操作によって光合成の効率を上げ、収穫効率を20%向上させることに成功している。この研究が進み、水不足/食料不足の解消に貢献することが期待される。