- 2024-9-25
- ニュース, 化学・素材系, 技術ニュース
- SDGs, アイシン化工, エポキシ樹脂, カーボンニュートラル, ポリスチレン-b-ポリイソプレン-b-ポリスチレン(SIS), ポリマー, 名古屋大学, 構造用接着剤, 研究, 脱炭素, 自動車部材
名古屋大学は2024年9月24日、アイシン化工との共同研究により、耐衝撃性に優れた構造用接着剤を開発したと発表した。
自動車や建築物、航空機などの組み立てにおいて、強度や耐久性に優れた構造用接着剤が注目されている。特に、エポキシ樹脂系接着剤は、機械的強度や耐久性の高さから広く用いられている。
一方で、エポキシ樹脂系接着剤の硬化物は通常硬く、柔軟性に欠ける。このため、衝撃強度や剥離強度が低く、外力に弱い点が課題となっていた。
エポキシ樹脂系接着剤の性能を高めるには、柔らかいゴム成分を加えて均一に分散するのが効果的とされる。しかし、ゴム成分は通常エポキシ樹脂に溶解せず、分散が困難だった。
今回の研究では、スチレン系熱可塑性エラストマーの一種であるポリスチレン-b-ポリイソプレン-b-ポリスチレン(SIS)ブロックポリマーを用いた。
同材料は、エポキシ樹脂に溶けないゴム成分と溶ける成分を分子レベルで結合させたものだ。添加剤として、室温でゴムのように機能しつつ、プラスチックのような加工性も有する。
エポキシ樹脂系接着剤にSISを加えたところ、ゴム成分を加えていないエポキシ樹脂系接着剤と比べて衝撃強度が約11倍、剥離強度が約1.3倍向上した。
さらに、名古屋大学らが独自に開発した水素結合性SISを用いたところ、衝撃強度が約22倍、剥離強度が約2.1倍にまで達している。
今回開発した接着剤は、ゴム成分を加えていないエポキシ樹脂系接着剤と同様に、異種材料接合が可能な一方で、衝撃強度や剥離強度といった接着性能では大きく上回っている。
開発した接着剤は、自動車の軽量化や走行安定性、燃費改善に寄与する脱炭素技術として期待される。同大学では今後も、社会実装に向けた研究開発を進めるとしている。