「五月病は新人だけの症状」ではなかった――5人に1人が経験し、2人に1人以上が知らなかった五月病のホント[医師解説]

2018年も5月に入り、ゴールデンウィークも終わろうとしている。週明けに出社することを想像し、「何となく気怠いから出社したくない……」と感じ始めている人も、少なからずいるだろう。

中には、「ひょっとしたら五月病なのかも」と考える人もいるかもしれない。だが五月病のことを、軽く考えてはいけない。fabcross for エンジニアが会社員6491人を対象に調査してみたところ、「五月病になったことがある」人は21.0%もいた。あなたの両隣、正面、斜め右、斜め左に座っている人のうち、1人は五月病の経験者だという計算になる。

「五月病」=「怠け者がサボりたいから発症するもの」と思っている人もいるかもしれないが、真面目で責任感の強い人が五月病にかかることもある。また、同調査の結果を見ると「五月病にかかるのは新大学生や新社会人のみ」だと考えていた人が半数近くいたようだが、どのような人でも五月病にかかる可能性がある。中堅社員やベテラン社員であっても、異動になったり昇進したりして職場環境が変わると、五月病にかかってしまう恐れがあるのだ。

東京都・港区にある藤美クリニックの加藤由美子医師は、「五月病の原因はさまざまなので、どのような人がなりやすいか一言では言えません」と説明してくれた。

加藤医師によると、五月病の原因の1つとしては、パーソナリティー障害、発達障害、自閉症スペクトラム障害、適応障害などが挙げられる。前線の通過や梅雨時に体調不良を起こす“気象病”も、原因の1つだと考えられている。さらに就職・転勤・引っ越し・昇進など、環境が大きく変わったことが引き金になることが多いとも言われている。

そして五月病になった場合は、「1人で悩まず、家族や友人、上司などに相談し、早めにかかりつけ医や産業医、心療内科や精神科を受診することが重要」(加藤医師)になるそうだ。

意外と多くの人が知らなかった五月病のホント

ここまで五月病について、いくつかの情報を紹介してきたが「どれもすでに知っていることだった」という人は多くないと思う。

意外と正確に知らない五月病のこと、ここからは先に触れたfabcross for エンジニアの調査結果を取り上げながら、加藤医師に伺った五月病に関する正しい情報を紹介していこう。

五月病とは医学用語ではなく、五月ごろに起こる心身の不調の総称である
(正しく知っていた人:42.9%)

5月の連休明けに起きる「会社や学校に行きたくない」「何となく体調が悪い」などの症状、それを総称して五月病と呼ぶ。

「五月病は医学用語ではなく、この時期に起こる心身の不調の総称です」(加藤医師)

最近では、6月や9月といった時期に五月病と同じような症状を訴える会社員もいる。そうした場合は、「六月病」「九月病」と呼んでいるようだ 。

五月病の初期症状としては、体調不良・やる気が出ない・だるいなどが挙げられる
(正しく知っていた人58.2%)

最も多くの回答者が知っていたのが、こちらの五月病の初期症状に関する情報だった。

しかし、五月病の症状はこれだけではない。「食欲が落ちる、不眠や過眠などの睡眠の障害、めまい、肩こり、頭痛、腹痛、下痢、胃痛など、さまざまな症状が見られます。こうした体調の悪さから、朝起きられず、出社できなくなることも少なくありません」(加藤医師)

一般的には、五月病の予防策として、いわゆるストレスマネジメントが重要と言われている
(正しく知っていた人25.4%)

前述のとおり、環境の変化によって生まれたストレスが五月病の引き金になることが多い。従って、五月病の予防策としては、ストレスとの向き合い方が大切になる。

「まず、体調不良のときは、自分の性格、環境の変化、ストレスの大きさを見極めましょう。
一般的には、五月病の予防策として、いわゆるストレスマネジメントが重要と言われています。規則正しい生活を心掛け、軽いウォーキングも効果があります。寝付きの悪い方は、就寝1時間前には部屋を少し暗めにし、テレビ・パソコン・スマホは避けましょう。
腸内フローラを整えるため、野菜や発酵食品を普段から多くとることも重要です。軽いストレッチ、ぬるめのお湯にゆっくり入るなどもいいと思います。ストレスコーピングも効果があると言われています」(加藤医師)

五月病などへの対策として、多くの企業は産業医の面談や電話でのストレス相談窓口を用意している
(正しく知っていた人16.5%)

五月病について、最も知られていなかったことがこちら。加藤医師は「研修などを通じて、病気のことを学んでいただくのも必要です。五月病についての対策の多くは、ストレスマネジメント対策と重なります。ぜひ1度、『キラーストレス 心と体をどう守るか』(NHK出版新書)を読み、参考にしてください」とも助言してくれた。

ちなみに、「五月病になった場合は1人で悩まず、家族や友人、上司などに相談し、早めにかかりつけ医や産業医、心療内科や精神科を受診することが重要」ということを知っていた人は28.1%。五月病の初期症状が起きてしまうことは、決して恥ずかしいことではなく、誰にでも起き得ること。「ひょっとしたら五月病なのかも」と感じたら、冗談で済ますのではなく、早めに家庭・職場で相談するようにしよう。

関連リンク

医療法人社団藤美会 藤美クリニック
キラーストレス 心と体をどう守るか|NHK出版

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