産業技術総合研究所(産総研)と筑波大学は2018年6月22日、半導体中の結晶粒界付近で電荷が不均一に分布する様子や、結晶粒界が電気伝導を阻害する様子を可視化することに成功したと発表した。
近年のIoT化の高まりにより、ディスプレーやセンシングデバイスなどの情報入出力機器の大面積/軽量/フレキシブル化や、製造工程の簡略化/省エネルギー化が強く求められている。そのためには、製造工程の簡易化に適した多結晶性半導体を用いることが有効とされる。しかし、多結晶性半導体は、無数の微結晶で構成されて不均質なため、動作性能の低下や、性能の再現性などに悪影響を与えることが懸念されていた。そのため、結晶粒界などが電気伝導に及ぼす影響を調べる必要があり、新しい評価技術が求められていた。
研究グループは今回、薄膜トランジスタ(TFT)の電荷を可視化するゲート変調イメージング技術において、空間解像度を810nmから430nm、時間分解能を3µsから50nsに向上させた。
それにより、多結晶性半導体の不均質な構造に起因して、電荷分布が著しく不均一であり、微結晶の内部よりも結晶粒界に近い部分の電荷密度が相対的に高いことがわかった。これは、結晶粒界の電荷の流れを妨げる効果により、電荷が捕捉されて電荷密度が高くなったためだという。
また、ゲート電圧をかけた直後にソース電極から半導体層に電荷が流れ込み、電荷がドレイン電極へと広がっていく様子を観測。電荷の流れが結晶粒界や微結晶内部の電荷トラップによってせき止められていることを確認した。これは、結晶粒界や電荷トラップが電気伝導を阻害することを初めて直接捉えたものだという。
研究グループは、同技術は、TFTの特性改善や高品質化に貢献することが期待されるとし、太陽電池や二次電池など、多様なデバイスへの展開も進めていくとしている。