自動化にかかわる機械系エンジニア、二刀流・三刀流を目指す姿勢がキャリアアップの近道に[“完全”自動化の時代へ]


~ 工場自動化(FA)の最新事情をエンジニアリングの分野別に考える ~

本記事は、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント熊谷英治氏への取材を通じて、工場自動化(FA:ファクトリーオートメーション)の最新事情をお伝えしていく連載記事です。

1回目に工場自動化にかかわる企業の動向、2回目にはこの分野で必要とされる機械系エンジニアの専門性について取り上げてきました。3回目の今回は、工場自動化関連の分野で、企業と機械系エンジニアのマッチングが上手くいくケースについて考えていきます。(執筆:中嶋嘉祐)


――工場自動化関連の機械系エンジニア市場において、人材採用したい企業と転職を考える機械系エンジニア、両者が上手くマッチングするのはどんなケースでしょうか。

[メイテックネクスト 熊谷 英治氏]まず機械系エンジニア側には、工場自動化や生産技術などの実績・経験が求められます。「業種が同じ」「工程が同じ」「品質・衛生管理の要求レベルが同じ」など、何らかの共通点がないと上手くマッチングしないでしょう。

異業種のメーカーへの転職も可能ですが、要求レベルの高い業界から低い業界へと動くケースでないとマッチングは難しいです。要求レベルの高い業界としては、半導体や自動車などの業界が挙げられます。

見方を変えると、半導体や自動車のメーカーで生産技術を担当しているエンジニアにとってはチャンスです。自動車などの業種は機械系や電気系のエンジニアが主役ですから、就職・転職希望の機械系エンジニアを比較的集めやすいです。

対して、化学や食品といった機械系エンジニアが主役ではない業種のメーカーはいくら大手企業であっても、工場を支える優秀な機械系エンジニアの採用には苦戦しているところが多いです。

こうした業種も転職先の候補に加えれば好条件で迎え入れられる可能性が高くなりますから、異業種の大手企業へ転職して年収を大きく上げることも可能かもしれません。

経験社数の多さはマイナスでも、幅広い業務経験をプラスに

――実際にメイテックネクストで支援したエンジニアの転職成功事例を教えてください。

[熊谷氏]装置の組み立てやパソコンの修理など、さまざまな企業でキャリアを積んできたエンジニアの転職活動を支援したことがあります。

採用するメーカー側にしてみたら、転職希望者の経験社数が多ければ多いほど、「腰を据えて長く働いてくれないのではないか」と思ってしまい、厳しい評価を下したくなります。私は「この方は転職活動に苦労するかもしれないな」と予感していたのですが、すんなりと大手企業に採用されることになりました。

その方は経験社数こそ多かったものの、さまざまな経験を積んできたことで、機械・電気・ソフトウェアなど、幅広い分野の知識を身につけていました。そうした点について、「当社の求める専門性をすべて身につけているエンジニアはなかなかいない」と企業側に評価していただけました。

前回、「機械だけではなくて電気や制御のことも分かるエンジニア」の方が、キャリアの可能性は広がるとお話しましたが、その好例だと思います。

“完全”工場自動化時代に備えるなら、エンジニアとして二刀流・三刀流を目指せ

――前回、「特定の工程だけに詳しい」よりも「複数の工程を分かっている」方が“完全”工場自動化にかかわるエンジニアとして評価が高くなるという話もありましたよね。

[熊谷氏]現在の工場自動化にかかわる機械系エンジニア市場を見る限り、若いうちから「特定の工程だけ」ではなくて、積極的に「複数の工程」で経験を積んでいくことをおすすめしたいです。

ゆっくりではあっても、今後、“完全”工場自動化に向けた動きが広がっていくのは間違いありません。そんな時代がやってくることを見据えて、「今の自分の持ち場はここだけど、1つ前、1つ後の工程についても勉強しておこう」「今は機械のことしか詳しくないから、電気や制御のことも学ぶようにしよう」といったように、エンジニアとして二刀流、三刀流を目指すこと。そう心掛けて日々の業務に取り組んでいけば、エンジニアとして生涯活躍できると思います。



熊谷 英治(メイテックネクスト 機械・メカトロ分野 コンサルタント)

<メッセージ>
生産技術のエンジニアとして約11年間メーカーで勤務いたしました。
お客様やベンダーをはじめ、自社の営業・開発・設計・技術・品質保証など数多くの人とプロジェクトを動かした経験や、国内・海外工場で得た知識・体験を生かして全力で転職支援させていただきます。
転職活動を始めると、噂などを含め転職に関する情報量があまりに多いため、本来の思いを見失ってしまう方がいます。
そういったことが無いよう、日々生じる不安・疑問を取り除き、思いに合った企業に出会えるようサポートいたします。


取材協力先

メイテックネクスト
メイテックネクスト分野別コンサルタント

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