理化学研究所(理研)と東京大学らの共同研究グループは2018年9月27日、「超薄型有機太陽電池」で駆動し、心電波形を計測する「皮膚貼付け型心電計測デバイス」の開発に成功したと発表した。生体情報の常時モニタリングなど、次世代の自立駆動型センサーデバイス実現への寄与が期待できるという。
伸縮性のある薄型有機太陽電池は、ウェアラブルなセンサーを長時間安定に駆動する電源としての応用が期待されることから、皮膚や布地に密着させて、より高精度な生体信号を計測する次世代センサー用の電源として注目を集めている。しかし、衣服や皮膚などの変形や光の入射角度変化の下では、太陽電池の出力が不安定になるため、皮膚に貼りつけが可能なほどの超薄型電源とセンサーが集積化されたデバイスは、これまでに報告されていなかった。
今回、共同研究グループはまず、フレキシブルな超薄型有機太陽電池の開発に取り組んだ。ナノスケールの規則正しい線状の凹凸パターンである、「ナノグレーティング構造」を超薄型基板上に形成する技術を確立し、厚み1μmの超薄型基板上の太陽電池の電子注入層と半導体ポリマー層の両方に高さ数十nm、周期約700nmのナノパターンを形成した。その結果、作製した太陽電池のエネルギー変換効率は、これまでのフレキシブル有機太陽電池の世界最高効率である10.0%を更新し、10.5%を達成した。また同時に、課題だった光入射角度依存性の低減にも成功した。
次に、この超薄型有機太陽電池を同グループで開発している皮膚貼付け型センサーと集積化することで、心電計測デバイスを外部電源なしに駆動させ、精度よく信号を取得することに成功した。
これによって、電力の消費や人体への負荷を気にせずに、連続的に生体情報を取得するための要素技術が実現した。今回開発した超薄型有機太陽電池で駆動する皮膚貼付け型心電計測デバイスを発展させることで、無意識的に心電や心拍、他の生体情報を取得するセンサーデバイスを実現できるとしている。