芝浦工大、柔軟な有機樹脂上に安価な銅で配線形成に成功――大気中でレーザー照射するだけ、低コスト化に貢献

芝浦工業大学は2018年10月17日、大気中で銅錯体膜へレーザー照射することで、有機樹脂上で簡単に銅配線を形成できる技術を開発したと発表した。

レーザー照射で配線形成する場合、一定以上のエネルギー量が必要になる。そのために従来は、ガラスやセラミックスなど、基板には耐熱性のある素材が用いられていた。

また配線には、比較的高性能で安価なことから、銅が使われることが増えてきている。しかし銅は容易に酸化するため、高真空環境下での作業や複雑な工程などが必要になり、コストや時間がかかってしまっていた。

こうした問題を解決するため、芝浦工業大学の研究チームは、分解性のある銅錯体溶液を有機樹脂(ポリイミドフィルム)上に塗布し、レーザー照射することで銅錯体に化学反応を促す手法を研究。連続的に照射することで、銅を定着させることに成功した。

さらに原料となる銅錯体の種類を複数組み合わせて、その比率を工夫することによって低エネルギー量で銅を析出する条件を発見した。そのため、高エネルギー量で照射すると溶けてしまう有機樹脂上でも、銅配線を形成できるようになった。

この手法を用いることで、銅膜が均一化・緻密化して配線の表面がより滑らかになり、銅配線の導電性も高まった。これまで必要だった特殊な設備が不要になるのに加えて、銅めっき法との併用によって銅膜の厚さを増すことも可能になる。通常の銅めっき法で使うパラジウムなどの貴金属触媒なども不要になるなど、大幅なプロセスの簡略化と低コスト化が見込めるという。

今回の技術は、柔軟性を必要とする生体センサーや、設置場所を選ばない太陽電池などに展開できる見通しだ。

今後は、銅錯体の組み合わせやレーザー光の波長を変えることで、さらに耐熱性の低いPETフィルムなどの素材にも応用できるように研究を進める。また、銅を析出させる配線幅を狭めて、配線を微少領域に高集積化させることで小型デバイスへ利用していくことも検討する考えだ。

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