- 2019-2-26
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- Neil Johnson, Science Advances, アメリカ科学振興協会(AAAS), ジョージ・ワシントン大学, スイートスポット, 中央集中型システム
中央集中型システムでは、コンポーネントが優れているほど、より高い機能が発揮されるが、分散型システムでは、個々のコンポーネントの能力が低い方が効率的に目標を達成できるという興味深い研究結果が、米ジョージ・ワシントン大学から発表されている。
物理学教授でデーターサイエンス専門家のNeil Johnson博士の研究チームは、自動運転車両の群れのように数多くの移動するコンポーネントを持ち、中央制御を持たないシステムがどのようにしてターゲットやゴールに到達するかについて研究を行った。
研究チームは、分散型システムの計算モデルを作り、コンポーネントが時間の経過とともにどのように改善され、問題解決により効率的になるかを反映するように変数を調整した。その結果、個々のコンポーネントの性能が改善されるにつれ、システム全体のパフォーマンスが悪化することを見いだした。
Johnson博士によれば、コンポーネントが賢くなるにつれて、それらは集合的にいっそう重大なエラーを起こすようになり、過去のミスを繰り返すようになる。過剰な能力を持つコンポーネントが担当する仕事でミスが起きたとき、ゴールを達成するために自ら修正し始める。しかし、それが過度の修正につながり、システムをゴールからさらに遠ざける「最悪の行為」になるという。
「オブジェクトがスマート過ぎない限り、分散型システムは優れている。しかし、それがあまりにも賢くなるとシステムとしては逆転してしまうだろう」と、Johnson博士。「その鍵は、分散型と中央集中型システムの間の“スイートスポット”の位置が、コンポーネントの賢さによって変化することを理解することだ」と、指摘する。
この研究は、中心的な頭脳を持たない分散型システムは障害やエラーに対して高い回復力があるという理論を裏付けるもので、より優れた自動運転車両の開発、次世代の人工知能アルゴリズムの最適化などにつながるものだ。研究成果は、アメリカ科学振興協会(AAAS)の発行する『Science Advances』ジャーナルに掲載されている。