ナイロンを使い、透明で厚さ数百nmの強誘電性フィルムを開発――電子テキスタイルなどに応用可能か

(C) Frank Keller / MPI-P

独マックスプランク高分子研究所の研究グループは、ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ、ウッチ工科大学と共同で、人間の髪の毛より数百倍薄いナイロンフィルムを開発した。厚さはわずか数百ナノメートルで、曲げられる電子機器や衣類に用いる電子機器への応用が期待されるという。この成果は、2019年8月16日に『Science Advances』に掲載された。

現在、ウェアラブルな電子機器や電子テキスタイルへの注目が集まっている。一方、合成ポリマーの一種であるナイロンは、織物で最も広く使用されている合成繊維の1つだ。ナイロンの中でも奇数ナイロンはいわゆる「強誘電特性」も示す。強誘電体材料は、センサー、アクチュエータ、メモリ、環境発電装置などで使用され、代表的な強誘電体材料としてはセラミックスが挙げられる。

強誘電体材料としてポリマーを使用すれば、溶媒を使って液化できるため、コンデンサ、トランジスタ、ダイオードなどの電子部品に適した柔軟な薄膜を低コストで形成できるという利点がある。しかし、溶液処理された強誘電性ナイロン薄膜は、ナイロン鎖が水素結合を形成する傾向が強く、高品質な薄膜を作成することができなかったため、これまで電子機器への応用は進んでいなかった。

今回、同研究グループは40年にわたる難問を解決し、電子メモリ部品などに使用できる非常に薄く滑らかなナイロンフィルムを作り出した。ナイロンをトリフルオロ酢酸とアセトンの混合物で溶解し、再び真空状態で凝固させることで、透明強誘電体ナイロン薄膜コンデンサを製造。堅牢性の面でも優れた性能を示したという。

将来的には、柔軟な電子機器の重要な構成要素になり、曲げられる電子機器や衣類の電子機器、ソフトロボット、生物医学デバイス等に応用されるのではないかと期待されている。

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