エンジンの駆動中における、ピストン内部での潤滑油の挙動の可視化とシミュレーションに成功 東海大

東海大学は2019年3月26日、乗用車用エンジンの駆動中において、ピストン内部で生じる潤滑油の挙動を可視化するとともに、その動きをシミュレーションすることに世界で初めて成功したと発表した。

自動車用エンジン内部ではピストン運動によって生じる部品間の摩擦を低減するため、ピストンに金属製の輪(ピストンリング)を設け、そこに潤滑油を供給する手法が用いられている。しかし、これまではエンジン駆動中の内部の詳しい挙動は想像に頼るしかない状態だった。潤滑油がエンジンの燃焼室に入るとエンジンオイルが消費され、悪性の排気ガスを外部に排出する危険性があるが、その原因は未解明だった。

東海大学工学部機械工学科の落合成行教授らの研究グループは、トライボロジー(摩擦学)をはじめ、フォトクロミズム(油の流れを可視化する技術)の手法や構造解析技術、混相流解析技術(気体と液体が混ざった物質の流れをシミュレーションする技術)を融合して、エンジンのシリンダーとその内部にあるピストンの間で生じる摩擦の解析に取り組んだ。

50%摩擦低減を支えるオイル消費低減技術/解析SG3

この結果、構造解析からシリンダー内部のねじ締めや熱の影響で生じる微妙な歪みの影響により、ピストンの高速駆動時にはピストンリングのジャンプ現象が生じ、大きなすき間ができることが判明。さらにフォトクロミズムによって、エンジン内部で潤滑油の膜厚が変化する様子や潤滑油が移動する過程の可視化に世界で初めて成功した。加えて、混相流解析技術を用いてオイルの流れをシミュレーションすることにも成功している。

ピストリングの動的変形解析

フォトクロミズムによる新しい油膜計測

今回の研究によって、一般車が街中で走る程度の回転数時ではオイルの動きを解明することが可能になった。今後研究グループは、より高速で回転する時の挙動を可視化する手法を開発するとともに、トランスミッションなど他の部品内でのオイルの挙動の解析を目指すという。

東海大学の研究グループ

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