- 2019-11-16
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- Ellen Peters, オハイオ州立大学, 数学, 米国科学アカデミー紀要(PNAS)
オハイオ州立大学が実施した2つの調査から、数学の能力が高くてそのことに自信のある人は、数学の能力が高くてもそのことに自信のない人に比べて、経済的にも健康的にも優位であるということが分かった。例えば、その差は年収に換算して9万4000ドル(約1000万円)にもなるという。
調査を行ったEllen Peters教授は、「数学に対して高い自信を持っている人は、数字を扱うことに心地よさを感じており、分数や確率が得意だと信じているという結果になった。こういった人々は、数字が関係するタスクに取り組むことを楽しんでいるようだ」と語る。
逆に、自信を持っていない人々は数学的タスクが難しくなったり退屈になったりすると、最後までやり通すことがなく、「結果として、高いスキルを持っていても、その利点が活用されない」という。
1つ目の調査では、4572人を対象に数学のテストと、数学に対する自信に関するアンケートを実施し、自己申告の財務結果と比較した。財務結果には、クレジットカードの負債、投資、小口のローンの有無などを含んでいる。結果は、数学のスキルと自信を持つ人ほど、経済的に成功しているということがうかがえるものだった。
2つ目の調査では、91人の慢性疾患の患者を対象に同様のテストとアンケートを行い、医師が判断する症状の度合と比較した。ここでも、数学のスキルと自信を持つ人ほど、症状が軽いと判断されていることが分かった。これは、対象とした慢性疾患が根本的な治療法を持たないため、患者は薬のリスクやメリットを理解して用量を守ったり、適切な健康保険を選ぶ必要があったりするなど、治療をコントロールするには数学のスキルが必要だからだと考えている。
ここで注意しなくてはならないことは、自信だけあっても駄目で、能力を伴わないと意味がないということだ。2つ目の調査で、症状が重い患者の割合に着目すると、「高いスキル/高い自信」を持つ人がわずか7%にとどまったのに対し、「低いスキル/高い自信」を持つ人は44%だった。
「もし、数学スキルが低いのに自信を持っている場合、知らないうちに間違いを犯してしまうかもしれない。必要ないと思って助けを呼ばず、そしてもっと悪い状態になってしまうだろう」とPeters教授は語る。教授によれば、私たちの約3分の1はスキルと自信のミスマッチを起こしており、まずは、自分の能力を理解することが大切だとしている。
研究結果は、2019年9月9日付けの『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載されている。