理化学研究所(理研)は2019年6月11日、空気噴流によって「水とのなじみやすさ(親水性)」を評価することで、流し台などの水と接する物体の表面に発生する”ヌメリ”、つまりバイオフィルムの有無を簡便に評価する手法を開発したと発表した。
今回の研究は、理研生命機能科学研究センター集積バイオデバイス研究チームの田中信行研究員と田中陽チームリーダー、鈴鹿工業高等専門学校の平井信充教授、北川鉄工所の春園嘉英係長らの共同研究グループによるものだ。
現状、バイオフィルム対策技術の研究開発では、染色や乾燥後の顕微鏡観察など、前処理が必要な検出方法が利用されている。そのため、バイオフィルムに特別な前処理を施すことなく、そのままの状態で簡便に調べるための手法が求められてきた。
共同研究グループは今回、バイオフィルムが多糖類やタンパク質など親水性の生体高分子を多く含むことに着目し、バイオフィルムの形成の有無が物体表面の親水性を調べることで分かると考えた。そこで、水で覆われた物体表面に一定圧力の空気噴流を噴射し、それにより発生した「液体除去円」の大きさからバイオフィルムの親水性を評価することを試みた。
この手法では、空気噴流によって生じた「除去円」が小さいほど、基本的には物体の水とのなじみやすさが大きいと言える。同手法を用いて、清浄なプラスチック容器と、バイオフィルム形成のために特別に用意したバイオリアクター内に14日間置いたプラスチック容器の親水性をそれぞれ評価したところ、前者では大きな除去円が生じるのに対して、後者ではその3分の1ほどの直径の除去円しか発生しなかった。
以上の実験により、特別な前処理無しにサンプルに空気噴流を当て、除去円を観察するだけで、バイオフィルムの有無を評価できることが分かった。今回の研究成果により、流し台などの住宅設備に現れるバイオフィルムのほか、歯の表面に形成される歯垢などのバイオフィルムの評価を、より簡便に行う技術の開発が期待できる。