安全運転支援か、完全自動走行か――国内自動車メーカーは、自動運転をどの“レベル”まで進めるのか


本コラムは、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント・河辺真典氏からの寄稿です。旬のキーワードを取り上げ、エンジニアのキャリア形成に役立つ情報を発信していきます。


自動運転に対応する自動車を、国内外のメーカーが本腰を入れて開発中です。国内メーカー各社が2020年までの実用化を目指すと打ち出したり、IT企業のGoogleが参入したりするなど、話題には事欠きません。

ところで、自動運転と言ってもメーカーによって目指す“レベル ”が異なります。自動運転のレベルとしては、加速・操舵・制動のいずれかをシステムが行う「レベル1」(安全運転支援システム)、それらのうち複数の操作をシステムが行う「レベル2」と全てをシステムが行って要請時のみドライバーが対応する「レベル 3」(準自動走行システム)、ドライバーがまったく関与しない「レベル4」(完全自動走行システム)という定義が使われています。

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内閣府「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム) 自動走行システム 研究開発計画」(2015年5月21日)より

この定義に従うと、Googleなどは人が操縦しなくても自律的に走行する「レベル4」の自動車の開発を目指しているようです。自動車を「目的地に移動するためだけのツール」と見なしているのでしょう。

一方、マツダ自動車などはあくまでドライバーが主体の自動運転を目指すと表明しています。同社のキャッチフレーズ「Zoom-Zoom」( 子供のころ、「ブーブー」と声を上げ、風を切って走り回った楽しさ、ビュンビュンと走っていく自動車を夢中で見ていたワクワク感やときめき)が示すように、自動車を「人が運転を楽しむためのツール」と捉えていると考えられます。

自動車業界は今後、前者と後者、どちらの方向で自動運転を実用化していくのでしょうか?

多くの自動車メーカーは、完全自動走行システムを望んでいない?

あくまで「人が自動車を運転する」ことを前提にした世界観の中で、自動運転を普及させたい――。私の推測が入っていますが、このような思惑を抱いている自動車メーカーは少なくないでしょう。

“完全自動走行システム”として最適な自動車の設計を考えていくと、ハンドルもブレーキも必要なくなるかもしれません。従来の自動車とは全く異なるデザインや仕様が最適になる可能性が高いです。そうなるとスタートはほぼ横一線。新興企業でも既存の自動車メーカーと勝負できるようになるでしょう。

そうなってしまうと、これまで培ってきた技術やノウハウを生かせず、自動車メーカーの優位性が失われます。ですので、自動車メーカーの多くは自動運転を「レベル1」の“安全運転支援システム”として受け止め、「人が無事故で運転を楽しめる自動車を開発する」という方向へ進んでいくのではないかと考えます。

「自動運転=完全自動走行」というのは、そもそも最近出てきたイメージ

そもそも「自動運転」と言われてレベル4の自動走行システムを思い浮かべる人が増えたのは、最近になってからのことです。

2000年ごろはまだ、「自動運転」と言えば「安全運転」のことでした。自動車メーカーが当時目指していたのは、自動車が自ら人を認識して接触を回避してくれるシステム。人が運転せずに目的地まで移動することを理想とする「レベル4」の完全自動走行は、恐らくどのメーカーも視野に入れていなかったはずです。

今後も、自動運転の技術は安全運転の延長線上で開発が進むと思います。居眠り運転による事故を防止するシステムのほか、高齢者でも安全に運転できるシステムなどが実用化していくことでしょう。それでも、「人がハンドルを握って自動車を運転する」という基本軸は、そう簡単にぶれないと考えます。

ここまで、自動運転に対するメーカー側の思惑について説明しました。では、自動車メーカーはどのような職種・業務で技術者を求めているのでしょうか。そのあたりの話を次回、取り上げたいと思います。


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河辺 真典(メイテックネクスト 執行役員)

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