- 2020-3-31
- REPORT, 機械系
- 3D CAD, CAD, パラメトリックモデリング
前回は、CADでの寸法拘束や幾何拘束の基本について解説してから、四角の描画をしてきた。今回は、円を描画しながら寸法拘束と幾何拘束について解説していく。(執筆:小林由美)
円を加えたり、増やしたりする
機械部品には当然、穴が開いていたり、凸形状が設けられていたりする。図形の中に詳細な形状を加えていくときにも、拘束のことを考えて作図していく。
第2回 でも説明した通り、図形を最初に描くときも作図を進めていくときも、「0,0,0」になる原点を意識する(トレースの場合は、決められた設計や製図の基準点に従う)。
以下の図では、左下を原点にして作図している。円の場合は、縦横の寸法の位置と、円の作図コマンドで円の直径を決めれば、完全拘束になる。円のコマンドを選択した時点で、円が定義されているからだ。これは簡単だ。
さらに、2重になる円を作図したい場合がある。その場合は「同心円」という拘束条件になる。文字通り、中心点が同じ場所になることだ。ねじ頭をしまうザグリ穴の作図などでも使う。
上の図の二重丸の中心付近に「◎」印が出ているのが分かるだろうか。上図はFusion360の例だが、どのCADも似たようなマークになる。ここでは直径2mmの円を描いておいて、直径5mmの円を重ねて描いている、円コマンドを選択して、直径2mmの円付近にマウスカーソルを持ってくると、同心円のマークが出てくる(これも、どのCADでも同じだ)。マークが出てきたら、そこでクリックをして中心を決め、直径を入れたら、それで完全拘束になる。
もし、同心の円がうまく定義されていないと、外側の円の線が黒くなる。その場合は、拘束コマンドを使って、後から同心円を定義することができる。逆に、複数の円を同心にしてはならない場合は、この同心円の拘束が入っていないか、チェックをする必要がある。または「一致」の幾何拘束で、「2つの円の中心点は一致する」と定義しても、同心円が定義できる。
円を直列に並べたい場合もよくあると思う。その場合は、中心点を「水平」で定義する。Fusion360では「水平/垂直」という定義になる。
水平を定義しておけば、上の図の「5」だった寸法を「3」に直せば、列を保ったまんま他の円もずれる。この定義をしておけば、例えば複数の穴が列になって開いている場合などで、列の位置を変えたい場合は、寸法を1カ所だけ修正すればよくなる。逆に、定義をしていないと、寸法を直しても他の円が修正についてきてくれない。
縦の円の列を作りたい場合、Fusion360であれば「垂直」で同じことをやればOKだ。なおSOLIDWORKSの場合は「鉛直」という名前になるが、やることは同じだ。
寸法を「3」に変えると、未定義の円も一緒に下がる。
「等しい」を選んで、それぞれの円を選べば、同じ直径にすることができる。Fusion360では円の淵を横切るように「=」のようなマークが入っている。SOLIDWORKSは「等しい値」と呼んでいる。
この3つの円は、「Φ2.0mm」の値を任意の数字に直せば、同時に大きさが変わる。例えば、位置は変わるかもしれなくても、同じサイズの穴を空けることが分かっていれば、このような拘束を入れておく。
(次回へ続く)
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ライタープロフィール
小林 由美
メーカーで業務用機器やコンシューマ機器の機械設計を経験後、大手メディアの製造業専門サイトのシニアエディターを経て、2019年に株式会社プロノハーツに入社。現在は、広報、マーケティング、イベント企画、技術者コミュニティー運営など幅広く携わる。技術系ライターとしても活動。