沖縄科学技術大学院大学(OIST)は2019年9月6日、電子の量子状態への遷移を検出する新たな手法として鏡像電荷を用いた検出法を考案したと発表した。
わずかな数の量子ビットの制御と量子コンピューターの構築との間には大きなギャップがあり、同手法を用いれば10センチメートル四方のチップを作成できる可能性があるという。また研究者らは、新手法の長所は単一の電子にスケールダウンし、単一電子を量子ビットとして利用できることだとコメントしている。
電子を量子ビットとして使用するためには、電子が自由に動かないように捕獲する必要がある。今回の研究では、電子の捕獲システムの作製に、液体ヘリウムを基質として使用。液体ヘリウムには不純物がないため、ヘリウムの電子は他のどの材料よりも長い時間量子状態を保持することが期待できるという。
実験では、平行に配置したコンデンサプレートを内部に含む、銅のセル内を絶対温度0.2度にまで冷却し、内部に液体ヘリウムを凝縮した。
タングステンのフィラメントで生成された電子は、液体ヘリウムの表面に固定され、 銅のセル内にマイクロ波を照射することで電子の量子状態が励起され、電子は下部のコンデンサプレートから、上部のコンデンサプレートの方向へ移動する。
量子状態の励起を鏡像電荷と呼ばれる静電現象によって観察。鏡の反射のように、画像における電荷は電子の動きを正確に反映し、電子がコンデンサプレートの近くに移動すると、イメージ電荷がそれに伴い移動することを確認した。
今後は、鏡像電荷を用いた検出法を用い、量子システムの完全性を損なうことなく、個々の電子のスピン状態または軌道状態を測定していくという。