高い清浄化速度と優れた油分分離性を有する油水分離膜を開発――災害や油流出事故による汚染水処理に貢献 神戸大学

(上)電子顕微鏡観察結果と(下)多孔膜表面への親水性シリカ薄層形成法の概念図

神戸大学は2019年10月30日、親水性シリカの超薄層を多孔膜上に形成することで、油分による汚染水を清浄化できる高性能分離膜の開発に成功したと発表した。この油水分離膜は、水不足問題解決への貢献が期待できるという。

油成分が混ざり合わずに分散する産業廃水やシェールオイル随伴水、また油流出事故により汚染された海水など、油分で汚染された廃水を清浄化する技術が望まれている。しかし、従来の凝集法や空気浮上法では直径20μm以下の微小な油滴の分離が難しく、膜分離法では油滴が細孔を塞いでしまう上、タンパク質などの付着で性能が低下するという問題があった。

そこで、研究グループは今回、表面修飾によりプラスの電荷を付与した多孔膜に、マイナス電荷を有するシリカを反応させることで、多孔膜表面に約10nmの厚さの超薄シリカ層を形成することに成功した。超薄シリカ層は親水性なので、膜表面には薄い水の層が形成され、油を弾く。この膜を用いて油滴が分散した水を処理すると、水は膜を透過するが、油滴は膜を透過できない。この結果、油で汚れた廃水から油分を分離し、きれいな水が得られる。

また、超薄シリカ層は多孔膜の細孔を閉塞していないため、開発した膜は高速で水を透過できる。水の透過には圧力を加える必要はなく、10cmの水位差(約0.01気圧)があれば重力で水の透過が可能。さらに、1気圧の圧力差があれば1m2面積の膜あたり1時間に6000リットルの廃水を処理できるという。数10nmの極小の油滴も阻止可能で、様々な種類の油分を99.9%以上分離する性能を持つと説明している。

処理前 (左) と後 (右) の油滴分散液の状態

また、膜への油滴の付着がほぼ起こらないため、従来の膜分離法で問題であった油滴の細孔閉塞もほとんど起こらないという。さらに、界面活性剤やたんぱく質に対しても汚れにくいことを確認している。

膜表面への油滴の付着性

研究グループは、今回開発した膜は、多孔膜の細孔を制御することで、様々なサイズの油滴の除去に対応できると説明。今後は、この膜の実用化に向けて、更なる高性能化を進めるとしている。

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