冷却時に失われるエネルギーを取り出して冷やしながら発電する技術を開発 東工大

現状の冷却の状況と、その解決を行う本成果のコンセプトの模式図

東京工業大学は2019年11月18日、データセンターや発電設備などで行われる「強制対流冷却」時に失われる、熱エネルギーの電気への可換分を取り出して発電する技術を開発したと発表した。

データセンターや発電設備などではその機能や装置、効率性の維持のために、流体を使った強制対流冷却が広く行われてきた。冷却するということは、本来電気に変えることができる熱エネルギーを破棄することを意味する。従来は冷却の重要性のみが着目されて、そのエネルギーを有効利用するための効果的な取り組みは生まれてこなかった。

今回の研究は、従来の固体熱電変換技術とは異なり、液体側で熱から電気への変換を行い、その液体を強制対流冷却の作動流体に適用するという着想で進められた。そして、「熱電気化学発電」と強制対流冷却を組み合わせることで、物体を冷やしながらの発電に成功した。

熱電気化学発電とは、冷却の義務が課せられていない「廃熱」に適用し、電力を回収する技術だ。酸化体と還元体を組み合わせた「酸化還元対」を溶かした液中に異なる温度の2本の電極を挿入し、温度差によって起電力を発生させる。この技術の研究はこれまで、密閉容器内で温度差による自然対流のみが存在する静的な状況のみで行われてきた。しかし今回、その技術を強制対流冷却と統合することで、冷却しながら発電することに成功した。

作動流体には安全性の高いイオン液体を採用して100℃以上の高温排熱面にも適用可能とし、酸化還元対には高性能で知られているコバルト錯体塩を使用。実証セルによる実験の結果、流路形状の最適化を行っていないにもかかわらず、620W/(m²K)という高い熱伝達率を達成した。また冷却と同時に、約2.5cm角の小型の電極サイズながら0.26mWの発電に成功した。さらに、発電量が流体を冷却させるために必要な流体駆動仕事を上回っており、冷却ユニット部に流体を通過させる仕事よりも多くの電力を発生できる(=ゲインが1を超えている)ことが示された。

今後は、発電のスケールアップや流路形状などの最適化、発電量に影響する高溶解濃度の酸化還元対種の開発を目指す。

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