マッハ17の航空機の実現へ――デトネーション推進システムの研究結果を発表

Background image credit: NASA. Aircraft and composite image credit: Daniel Rosato, UCF.

米セントラルフロリダ大学(UCF)の研究チームは、少ない燃料でクリーンな宇宙探査を可能にするデトネーション(爆轟)推進システムに関する新しい研究結果を発表した。ジェットエンジン用の極超音速反応チャンバーを作製し、デトネーションを安定化させる方法を発見した。この推進システムが実用化できれば、ニューヨーク~ロサンゼルスのフライト時間が30分以内になるという。詳細は、2021年5月18日付けで『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載されている。

デトネーションは、化学反応によるエネルギー放出が引き起こした衝撃波から成る超音速燃焼波だ。UCFの研究チームは2020年に、エンジン内に放出する水素-酸素推進剤の割合を最適化することで、連続的に回転しながら伝播する「回転デトネーションエンジン」の実証に成功している。しかし、デトネーションは継続時間がわずかマイクロ秒~ミリ秒と短いため、研究が難しく実用化を阻んでいる。

今回、研究チームはデトネーション波を定在化させることができる「斜めデトネーションエンジン(ODWE)」に着目。「HyperREACT(高エンタルピー極超音速反応設備)」を開発し、デトネーションの継続時間を3秒間維持することに成功した。「デトネーションが安定することを実験的に示したのは初めてだ」と、研究を主導したKareem Ahmed准教授は語っている。

HyperREACTは、予熱部、混合チャンバー、主燃料噴射部、CD(コンバージェント-ダイバージェント)ノズル、テストチャンバーの5つで構成する。デトネーション波を安定化させるカギは、極超音速の流れの中で、混合物の組成と熱放出の最適なバランスを取ることだ。研究チームは、テストチャンバーの内部に30度の角度のついたランプ(傾斜)を設けることで、この問題に対処した。今回の成果は、ODWEに関する基本的な疑問の解決にも役立つとしている。

アメリカ海軍調査研究所(NRL)も、流体力学シミュレーションで参加した。「このような研究は斜めデトネーションのような複雑な現象に対する理解を深め、エンジニアリングスケールのシステム開発を進めるために重要だ。今回の研究は、シミュレーションと実験の両方の領域を押し広げている」と、論文の共著者であるNRLのGabriel Goodwin氏は語っている。

このシステムを利用した極超音速航空機は、マッハ6~17のスピードで飛行可能で、都市間の移動だけでなく、宇宙旅行への展開も見込まれる。今後は、斜めデトネーション波が安定化できる基準を決定するために、新しい診断機能と計測ツールを追加する予定だ。

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