発電と蓄電を同時にできる燃料電池を開発――太陽光エネルギーを化学エネルギーに直接変換

名古屋工業大学は2020年1月24日、太陽光エネルギーを化学反応により蓄積と放電する「光充電可能な燃料電池」という新しい発想の蓄電池を開発したと発表した。

従来の燃料電池は水素ガスを燃料としており、反応時に水しか排出しない利点はあるものの、危険性が高く、また、電気を蓄えられない「発電のみの装置」だった。

対して、本研究で開発した燃料電池は、太陽光のエネルギーを化学エネルギーに直接変換する新しいタイプの蓄電池だ。

これは、植物の光合成と類似のしくみで化学反応を利用して発電/蓄電するもので、自然エネルギーの利用効率の改善が期待されるという。

植物の光合成と今回開発した蓄電池の比較

植物の場合、太陽光のエネルギーを用いてCO2を糖に変換して貯蔵する。一方、開発された蓄電池は、CO2をAQDS、糖をAQDS-H2に置き換えたシステムとみなすことができ、蓄電池内のAQDS-H2と空気中の酸素が反応することによって生じるエネルギーを、電気エネルギーとして外部に出力する仕組みだ。

蓄電池の構造は以下の通りだ。

負極側の電解液にAQDSという有機分子が溶け込んでおり、太陽光を照射すると、AQDSは電解液中の水素原子を引き抜いてAQDS-H2という分子に変換され、電池全体として充電状態となる。

放電の際、負極ではAQDS-H2からAQDSへの変換反応が起こると同時に、正極では、空気中の酸素分子が水に還元される。

放電で生成したAQDSは、再び光照射によってAQDS-H2に変換することが可能で、電池として何度も繰り返して使用することができる。

今回開発した蓄電池の構造模式図

試作電池で充放電実験を行い、光充電可能な燃料電池が構築可能なことは実証した。しかし現時点では、出力電力は0.5V程度であり、起電力の向上や反応過電圧の低減が技術課題だという。

既存の蓄電池をベースとした電力網では、電力輸送や蓄電のプロセスで大きなエネルギーロスが生じるため、エネルギー効率が低くなってしまうことが問題であったが、この技術を利用すれば、自然エネルギーの利用効率の改善と電力の安定供給が期待される。

今後は負極活物質(AQDS)の改良やセル構造の最適化を実施し、実用化に向けた研究を加速させることを予定している。

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