- 2020-6-22
- 技術ニュース, 海外ニュース, 電気・電子系
- 5G, Ash Stott, Energy and Environmental Materials, カーボンナノチューブ(CNT), サリー大学, スーパーキャパシタ, ポリアニリン(PANI), モバイルIoTアプリケーション, 学術, 疑似容量, 電気自動車
英サリー大学は、2020年5月13日、急速充電できるスーパーキャパシタ技術を開発したと発表した。研究成果は『Energy and Environmental Materials』に2020年4月28日付で発表されている。
急速充電が可能なキャパシタの開発によって、電気自動車でのエネルギー効率を格段に改善し、イギリスの国内高圧送電線網における再生可能エネルギー損失を削減できる可能性があるという。さらに、この技術は、風力エネルギー、波エネルギー、太陽エネルギーのエネルギー源が不安定であるという点をカバーし、その発展を促すという期待もあるようだ。
今回開発されたスーパーキャパシタ技術は、「疑似容量」というメカニズムを通じてエネルギーを蓄えるポリアニリン(PANI)と呼ばれる材料がキーだという。安価なポリマーであるPANIには導電性があり、スーパーキャパシタの電極に使用できる。その電極内にイオンをトラップすることで電極が電荷を蓄積し、電子とイオンの交換が起こってPANIをドープするという。
研究によると、電極は、カーボンナノチューブ、PANI、そして水熱炭化カーボンを用いた3層の複合材料で形成される。研究者らは、この3層構造によってスーパーキャパシタが、電力使用とは関係なく、高エネルギー密度で顕著な速度性能を示すことを確認している。
この複合材料の具体的な作製方法は2つのプロセスに分かれる。まず最初に、カーボン紙上で成長させたカーボンナノチューブ(CNT)フォレストの上に、PANIを新しい電着法で電析させる。続いて、グルコースの水熱炭化(HTC)を介したアモルファスカーボン層でコーティングし、3層構造を作る。
走査速度を遅くし、電圧を制限した電着方法により、CNT上に均一なPANIコーティングを生成できるとしている。ベース基盤のCNTは、PANIに優れた電子接続と構造接続をもたらし、アモルファスカーボン層コーティングによって電極抵抗が低減するので、充放電時の電気化学性能が向上し構造安定性が強化されるという。
研究を主導したAsh Stott氏は「世界のエネルギーの将来は、消費者と産業界がいかに効率よくエネルギーを生産し消費するかにかかっています。そして、スーパーキャパシタは、大電力供給のみならず、断続的に発生するエネルギーのストレージ向けの主要な技術の1つであることは既に証明されてきています。私たちの研究は、大電力で動作する高エネルギーデバイスのための基準を確立し、可能性のある応用範囲を広げています」と語っている。
本技術は、ウェアラブル技術から、5G革命を起こすであろうモバイルIoTアプリケーションに至るまで、多くの業界に影響を与えそうだ。