東京大学は2020年4月14日、同大学大学院理学系研究科の磯部寛之教授の研究グループが、窒素原子が埋め込まれたナノチューブを分子性物質として化学合成することに成功したと発表した。発表によると世界初だという。
同研究グループは2019年にナノチューブ分子化学合成法を独自開発しており、今回新たに窒素原子を埋め込むことを可能とした。これまではベンゼンを用いてきた化学合成法に、新たにピリジンを活用した成果である。
これにより、ナノチューブ分子の構成主原子304個のうち8個を窒素原子とすることができ、窒素原子の含有率を2.6%に定めることが可能となった。窒素ドープナノカーボンの電子的、化学的性質を計るのに適した組成となっている。
また、X線構造解析法を用いることで窒素上の孤立電子対(ローン・ペア)の存在が明確になったほか、窒素にはナノチューブに電子を注入させやすくする効果があることも判明した。
今回の研究により窒素がn型半導体になりやすくさせることが明らかとなっており、今後の窒素ドープナノカーボン材料の開発に寄与することが期待される。