山陽特殊製鋼は2020年8月24日、高密度な3D造形が可能な銅合金粉末を開発、商品化したと発表した。レーザー方式の3Dプリンターを用いて、導電性や熱伝導性、強度に優れた高密度な造形が可能となるため、従来の鋳造や延伸といった工法では困難だった複雑な形状にも容易に対応できる。電子/電気機器や熱交換器などの部品形状の最適化や、自動車、航空宇宙、医療分野などでの新市場の創出が期待される。
純銅は導電性や熱伝導性に優れており、電子/電気機器の部品や熱交換器などで複雑な形状に加工されて用いられるため、完成品に近い形状を容易に作製できる3Dプリンターへの適用が期待されている。一方で、レーザー方式の3Dプリンターに純銅を用いると、高い熱伝導性によりレーザー照射した熱エネルギーがすぐに拡散してしまい、溶融に要する熱を材料に与えられない点が課題となっていた。
同社は3Dプリンター向けの銅合金粉末を開発するにあたって、溶融した金属をアルゴンや窒素などの高圧ガスで球状に細粒化して凝固するガスアトマイズ法を用いると、銅への固溶限が小さい合金元素を通常より多く銅マトリクス内に固溶させられる点に着目した。
合金元素が多量に固溶することによりレーザー吸収率が大きく向上するほか、過飽和に固溶した合金元素を造形後の熱処理で銅のマトリクスから排出することで、導電性と熱伝導性を純銅に近いレベルにまで回復させ、強度を加えることも可能となる。
同社は、以上の点を踏まえて3D造形に最も適した合金元素とその配合量を見い出し、高いレーザー吸収率と純銅に近い導電性/熱伝導性を有し、純銅以上の強度を引き出せる銅合金粉末を開発した。
導電性/熱伝導性に優れた商品と、高密度/高強度に優れた商品の2種類を軸に、用途に応じた粉末を提供する。高導電性タイプは純銅(鋳造品)のおよそ9割の導電性と熱伝導性を有しており、高密度/高強度タイプは純銅の1.5倍超の強度を有する。
同社は、今回の銅合金以外でも3D造形に適した金属粉末の成分開発や材料特性を十分に引き出すための造形条件の確立、造形後の内部評価を速やかに行える開発体制を整え、試作用3D造形用粉末の提供や顧客の3D造形開発サポートを推進する。