アンモニア合成を低温化/効率化する触媒技術開発――ヒドリドイオンの移動度が合成活性に寄与 東京工業大学

東京工業大学は2020年12月25日、ヒドリドイオンの高い伝導度を示す希土類酸水素化物を触媒担体に用いることで、ルテニウム触媒のアンモニア合成活性を低温化、高効率化できることを発見したと発表した。

近年再生可能エネルギー由来の水素を利用したアンモニア合成が注目されている。この方法はエネルギー供給が不安定で、得られる水素が小規模であるために、実用化には従来の方法よりも小型のプラントが必要になる。これを実現するためには、低温/低圧で効率良く作動するアンモニア合成向け触媒が求められる。

従来のアンモニア合成は、ハーバーボッシュ法(HB法)によって400~500℃の高温で行われている。今回の研究では、希土類酸水素化物である「LaH3-2xOx」にルテニウムナノ粒子を担持した「Ru/LaH3-2xOx」が260℃以下の低温領域でも効率良くアンモニア合成触媒として働くことを見出した。

同大学ではさまざまな構造解析や第一原理計算などによってその要因を特定。LaH3-2xOxのヒドリドイオンが抜けた空きサイト(空孔)に補足された電子がルテニウムへ移動し、ルテニウムの電子状態が負に帯電した状態になる。これによりルテニウム上での窒素乖離反応が大幅に促進されて高効率化を実現していることを明らかにした。

同様の反応を示す「LaH3」では、アンモニア合成反応中にヒドリドイオンと窒素イオンとの置換反応が速やかに進行し、触媒表面に窒化物(LaN)が形成されることで、電子供与性が損なわれ、触媒活性が低下していく。しかし、LaH3-2xOxの場合は格子酸素が存在することで窒化を抑制しつつ、ヒドリドイオンの欠損に生じる電子の供与によってルテニウム触媒を活性化できていると考えられることが分かった。

同様の効果は他の希土類酸水素化物でも認められ、希土類酸水素化物担持ルテニウム触媒が従来の酸化物にルテニウムを担持した触媒よりも低温でかつ高い触媒活性を示すことが明らかになった。

今回の研究は、触媒表面のヒドリドイオンの移動度がアンモニア合成活性に大きく寄与することを明らかにしたもので、低温かつ高効率に作動するアンモニア合成触媒の開発に指針を与えるという。今後、ヒドリドイオンを含む新たな触媒材料開発を発展させ、さらに優れた触媒の開発や水素が関わる他の触媒反応への展開を目指す。

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