- 2021-7-8
- 技術ニュース, 電気・電子系
- 5G, 5G電磁波ワイヤレス給電, ビームド・モビリティ, ワイヤレス給電, 研究, 筑波大学
筑波大学は2021年7月7日、指向性の高い5G電磁波を使って地上から燃料をワイヤレスに供給する技術を開発し、空中でホバリング(停止飛行)するドローンへのワイヤレス給電実験に世界で初めて成功したと発表した。
次世代のモビリティ(輸送/移動手段)として、小型無人機のドローンや電動垂直離着陸機の空飛ぶクルマが注目されているが、それらの多くはバッテリーや、燃料の容量や重さの影響により、飛行時間や距離が制限される。
この航続距離や時間の最大の障壁となっているのはバッテリー性能で、現状のリチウムイオンバッテリーの性能でeVTOLを駆動させる場合、20~30分程度が限界となっている。そのため、本体にバッテリーを搭載せず、地上から直接、ワイヤレスで給電する技術が注目されている。
研究グループでは、モビリティに関連したさまざまな課題に対する新しいアプローチとして、電磁波を用いて地上から上空の移動体にワイヤレスで給電する「ビームド・モビリティ」という概念を提案している。移動体へのワイヤレス給電は、デバイスの設計時にバッテリーや燃料の性能、重量体積を考慮する必要がないことが利点で、電動化が進む自動車や小型航空機、空飛ぶクルマなどのバッテリーの制約を取り除けるという。
研究では、高いエネルギー密度を必要とするモビリティへ対応するため、指向性の高いマイクロ波(ミリ波)に着目。これは、従来のマイクロ波ワイヤレス給電研究が対象としてきた動作周波数の10倍以上に相当しており、5G電磁波(28GHz)を用いた実験としては世界初となる。
研究では実験を実施するため、マイクロ波を遮蔽するシールドルーム内(非GPS環境)でも飛行できるようにするドローン制御アルゴリズム、マイクロ波送電器の位相を制御してドローンの座標に対して送電ビームを追尾できる技術、5Gの周波数でマイクロ波を直流(DC)に変換できるアンテナ整流器の3つの技術を開発した。
これらの技術を用いた実験では、30秒間にわたり、飛行高度800mmでホバリングするドローンに対してほぼ途切れることなくマイクロ波を送受電できたという。既存研究のおよそ10倍という極めて高い周波数でワイヤレス給電できることを示したという。
この技術を用いると、現状では航空モビリティ重量の大半を占めている燃料(バッテリー)の割合を限りなく小さくでき、荷物や人員を運べるスペースを拡張すると同時に、燃料切れを心配せずに飛行できる。
現在の技術では、送電電力が小さく、ドローンの駆動に関してはマイクロ波だけで十分な給電ができない。今後、飛翔体の位置とビームのリアルタイム制御の精度向上、送受電用アンテナ間効率の改善を通じてワイヤレス給電効率の向上、送電の長距離化、大電力化を目指す。