MIT、傾けたり動かすことなく焦点を変えられる「メタレンズ」を開発

Courtesy of the researchers

MITの研究チームは、レンズの位置や形状を変えることなくピントの合う位置を調整できる「メタレンズ」を開発したと発表した。ドローンや携帯電話、暗視ゴーグルなどの小型レンズに応用できる可能性がある。研究の詳細は、『Nature Communications』に2021年2月22日付で公開されている。

一般的なカメラは、ガラス製のレンズを傾けたり前後に移動させたりすることで焦点位置を変えている。レンズの物理的な移動が必要なため、移動空間や可動部品によりカメラ本体が大きくなるという課題があった。

今回研究チームは、ガラスの代わりに温度により位相変化する透明な材料を用いてメタレンズを作製した。ゲルマニウム、アンチモン、テルルで構成される相変化材料「GST」は、CDやDVDの材料として使われており、加熱すると内部構造が変化して透明と不透明の間で切り替わる。研究チームは、最近GSTにセレンを加えた「GSST」と呼ばれる新しい相変化材料を開発した。GSSTは加熱するとアモルファス状態から結晶構造に変化する。この相変化により屈折力は変化するが、透明度にはほとんど影響しないという。

厚さ1μmのGSST層を素材とし、その表面をエッチングすることで、独自の方法で光を屈折させたり反射させたりする微細な精密パターン構造「メタサーフェス」を作り上げた。加熱によるGSSTの相変化に伴ってメタサーフェスの光学機能も変化し、より遠くの物体に焦点が合うように光の向きを変える。

開発したメタレンズに赤外線レーザービームを照射すると、加熱前後でピントの合う位置が変わり、レンズを物理的に動かすことなく異なる2つの深度に焦点を合わせることができた。赤外線波長域の光を撮影できるため、ドローン用の小型ヒートスコープや携帯電話用の超小型サーマルカメラ、薄型の暗視ゴーグルなどへの応用が期待できる技術だ。

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