シリコン・トランジスタに比べ1.9倍の電流特性を示すカーボン・ナノチューブトランジスタ

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ウィスコンシン大学マディソン校の研究チームは、溶液プロセスを用いて1インチ四方の基板上にカーボン・ナノチューブ(CNT)配列を堆積させたCNTトランジスタの試作に成功した。最先端のシリコン・トランジスタを凌駕する電流特性を示したという。

CNTトランジスタの性能はこれまで、シリコンやガリウム砒素トランジスタよりもはるかに劣っていた。だが、同研究チームは溶液プロセスを用いて、CNT溶液の急速な蒸発で起こる自己組成現象を活用し、ナノチューブを高精度に基板上へ配列。その結果、最先端のシリコン・トランジスタを上回る性能を持つCNTトランジスタを創り出した。

このトランジスタの開発を進める過程で、研究チームはCNTを純化させるのに苦しんできた。金属系不純物は銅線のように動作し、まるで電子機器のショートのように半導体特性を損なう。それゆえ、CNTの純化は重要な課題だった。

研究チームはこの問題を解決するために、半導体ナノチューブを選択的に分離する目的で高分子を用い、超高純度の半導体CNT溶液を作成した。チームを率いるArnold教授は、「私たちは、ほとんど全ての金属性ナノチューブを除外できる特定作成条件を明確にした。この条件に従えば、金属性ナノチューブを0.01%以下にまで除去できる」と語る。

他にも研究チームは、ナノチューブ配列と金属電極との安定した電気的接触を達成する真空焼成技術のほか、溶液プロセスで生じる残渣をナノチューブから取り除く処理技術を新たに開発した。

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以上の技術による純化を経て作製されたCNTトランジスタは、シリコン・トランジスタの1.9倍の電流を発生させられる。また、現在得られている単一ナノチューブの測定から外挿すると、シリコン・トランジスタよりも5倍高速で動作するか、5分の1ほどのエネルギーで動作するという。

さらに、ナノチューブの寸法が非常に小さいため、それを通過する電流信号を高速に変化させることが可能。そのため、ワイヤレス通信バンド域でゲインを顕著に増大できる。

研究チームは今後、このCNTトランジスタの特許を申請するとともに、世代ごとに小さくなるシリコン・トランジスタの形状にそろえる研究を続けていく。さらに、携帯電話の信号を増幅できる無線周波数域の高性能アンプの開発も進めていくつもりだ。

なお、自己組成現象による堆積プロセスは、スケールアップが可能。また急速に起こるため、基板の表面全域にCNTを堆積させるのに5分とかからない。CNTの堆積と配列はすでに、1インチ四方の基板上の大きさまで拡大させることに成功。現在、商業生産規模までのスケールアップについての研究が進められている。

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For first time, carbon nanotube transistors outperform silicon

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