MITなどの研究グループが「立方数の和の解」を短期間で求める手法を見出す

Image: Christine Daniloff, MIT

整数kを3つの立方数の和で表すx3+y3+z3=kという方程式は、立方数の和の問題として知られている。このうちk=42を満たす解は長年発見されておらず、数学者たちにとって難問だった。しかし2019年、ブリストル大学のBooker氏とMITのSutherland氏の研究グループは、世界中の家庭用コンピューター50万台をネットワークでつなぎ、ついにx3+y3+z3=42の解を発見した。さらにその後、驚くほど短期間でx3+y3+z3=3を満たす新しい解も発見した。研究グループは42、3、さらに100以上のいくつかの整数に対する新しい解について、2021年3月16日付で『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』誌で報告している。

x3+y3+z3=3は、(x,y,z)=(1,1,1)または(4,4,-5)という2組の簡単な整数解が知られている。1953年、数論の先駆的研究者であるLouis Mordell氏は、3に対する他の解が存在するかという難問を投げかけた。その後60年以上経っても3に対する3つ目の解は見つからなかったため、多くの人はもう新しい解は見つからないのではないかと考えていた。

しかし、Booker氏とSutherland氏は、42の解を見つけた直後に、次のように方程式の解を見つけた。
5699368212219623807203 + (-569936821113563493509)3 + (-472715493453327032)3 = 3
この解は21桁というとても大きな数を含んでおり、このことにより他のkに対してもさらに多くの解が存在することが示唆された。

解を見つけるために、研究グループは立方数の和の方程式を、k – z3 = x3 + y3 = (x + y)(x2 – xy + y2)という扱いやすい形に変形することから始めた。この方法は数学者Heath-Brown氏が最初に提案した手法で、彼はkに対して無限に解が存在するはずだと推測している。研究グループは、さらにx + yをdという1つのパラメーターで表し、両辺をdで割って余りだけ残すという剰余演算と呼ばれる数学の手法で問題を簡略化した。このことにより、dとzの値だけを探せば良くなったが、それでも探索すべき数は膨大だ。そこで、篩(ふるい)法と呼ばれる数学の技法を使って、アルゴリズムを最適化し、dの解となる可能性のある数を劇的に削減した。

さらに、アルゴリズムの検索を効率良く何十万もの並列ストリームに分割する方法も開発し、世界中の家庭用コンピューターで無料アプリとしてダウンロードできるようにした。その結果、40万台のコンピューターを使って、わずか2週間でk=3の3番目の解を発見した。もしこのアルゴリズムを1台のコンピューターで実行していたら、解を見つけるまでに数百年かかっていたという。

k=3に新しい解が見つかったということは、Heath-Brown氏の予測が正しく、最新の解以外にも無限の解が存在することが示唆される。「新しい解が見つかるたびに作業量は1000万倍以上になります。そのため、3の次の解を見つけるには40万×1000万台の家庭用コンピューターが必要ですし、それで足りる保証もありません。4つ目の解を私たちがこの先見つけられるか分かりませんが、私は存在すると信じています」と、Sutherland氏は語っている。

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