コロイドダイヤモンドを製造する手法を発見

米ニューヨーク大学(NYU)タンドン・スクール・オブ・エンジニアリングは、2020年9月23日、商業規模でも利用できる可能性を持つコロイドダイヤモンドを安価に製造する新しい手法を考案したと発表した。研究成果は、『Nature』に2020年9月23日付で発表されている。

コロイドダイヤモンドは極小の材料から成る安定した自己集合体であり、電子と同様にコンピューティングにおいて有用な光波を作る可能性を持つ材料として、1990年代から研究者の注目を集め、研究が続けられている。しかし、コロイドダイヤモンドの概念は数十年間にわたって研究されてきたが、確実に作製する方法は見つからなかった。今回、ついにコロイドダイヤモンドを製造する手法を見出したという。

NYUのDavid Pine教授らは、以前からコロイドとその構造化をテーマに研究をしてきた。コロイド粒子は人の髪の毛の直径の数百分の1という小さい球体で、その表面にはDNA鎖が接着している。DNA鎖は面ファスナーのように働き、他のコロイドにくっつく役割を持つ。コロイドが液体中で互いに衝突する際、DNA が引っかかり、コロイド同士がつながる。DNAがコロイドのどこに引っ掛かるかによって、自然発生的に複雑な構造が作り出されるという。

研究者らはこのコロイドが互いにくっついて構造を作り出すプロセスを利用して、コロイドから成るひもを作成したり立方体を作ったりしてきたが、可視光範囲のバンドギャップは作り出せなかった。可視光をフィルタリングできるようなバンドギャップをコロイド構造体に持たせるためには、コロイドがダイヤモンド構造を取る必要がある。これまでナノマシンを利用するようなコストも手間もかかるプロセスでコロイドダイヤモンド構造の構築が試みられてきたが、商業規模で利用できるような安価なプロセスは開発されていなかった。

研究者らは、コロイドダイヤモンド構造に欠かせないねじれ型結合を自然に生成する立体的なインターロックのメカニズムを発見。4つの粒子が合体した三角錐状コロイドを合成し、液体中で浮遊させると自然発生的にダイヤモンド構造を形成するために必要な向きで互いに結び付くという。コロイド自体がダイヤモンド構造を構築していくという優れた手法だ。こうして構築されたダイヤモンド構造は、形成時に必要な懸濁液を乾燥させた後も安定している。

コロイドダイヤモンドの実用化は、米陸軍戦闘能力開発コマンド(CCDC)陸軍研究所(ARL)内の陸軍研究事務所(ARO)からも注目されており、この研究はAROからの支援も受けている。研究者らは光をフィルタリングできるこの新構造を持つ材料の作成にも取り組んでいて、今回の発見は、将来、光コンピューターやレーザーの進歩に貢献する高効率の光回路や、より信頼性が高く安価に製造できる光フィルターなどへの応用が期待されるという。

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