- 2021-4-19
- 技術ニュース, 電気・電子系
- SPIE, SPIE Defense + Commercial Sensing 2021, パナソニック, フォノニック結晶構造, 遠赤外線センサー
パナソニックは2021年4月16日、フォノニック結晶構造を搭載した遠赤外線センサーの感度向上技術を開発したと発表した。
フォノニック結晶構造は、一般的なシリコン(Si)の断熱性能を示す物性値限界を大きく上回ることができる。パナソニックは周期100nm未満のフォノニック結晶を量産適用可能なプロセス技術を開発。Siウェハ上に数十nmの孔の直径や整列周期を緻密に制御したフォノニック結晶構造を形成し、Si材料の物性値限界を約10倍上回る断熱性能を得ることに成功した。
同技術を遠赤外線センサーの受光部を支えるSi支持脚部分に適用すると、受光部からの熱の漏れを従来の熱伝導率31.2W/mKから3.6W/mKへと約1/10に抑制できた。従来の遠赤外線センサーに比べて約10倍の感度向上が可能になると世界で初めて実証した。
電子デバイスの小型/高密度化がより一層進むと予測される中、デバイス局所の熱漏れや発熱密度の増加が問題視されるようになっている。従来よりも高度な熱制御技術が求められる中、フォノニック結晶構造を組み込んで熱輸送の担い手であるフォノンの伝搬を人工的に操作して阻害することで、従来の物性値限界を上回る断熱性能を実現できることが明らかになってきた。しかし、フォノニック結晶構造の寸法再現性や作製スループットの限界などが課題となり、これまでは実用的な電子デバイスへの応用は困難だと見なされていた。
今回の研究の成果は、光学/フォトニクス/画像工学分野の国際学会SPIE(The International Society for Optical Engineering)のトップ5カンファレンスの1つであるSPIE Defense + Commercial Sensing 2021の招待講演で披露された。