バイオ燃料の限界を超える人工酵母を開発

Image: MIT News, with images from iStockphoto.

MITの研究者らは、藁(ワラ)や雑草などのトウモロコシ以外の植物もバイオエタノールの原料として利用できる手法を開発した。セルロース系バイオマスの分解副産物であるアルデヒドをアルコールに変換できるように酵母を操作し、酵母のアルコール耐性を高める技術を用いている。研究成果は、『Science Advances』誌に2021年6月25日付で公開されている。

エタノールをはじめとするバイオ燃料の生産促進は、化石燃料の削減につながるとされている。現在のバイオエタノールの原料はトウモロコシに依存しているが、実は燃料需要を満たすのに十分な量を生産できていない。アメリカではトウモロコシの国内収穫量の約40%をエタノール生産に使用しているが、トウモロコシは本来食用農産物である上に、成長のために大量の水と肥料を必要とする。

一方で、ワラや雑草、トウモロコシの可食部以外を原料とするセルロース系バイオマスは、年間10億トン以上が生産可能であり、食用と競合しないため、トウモロコシの代替として期待されている。セルロース系バイオマスを利用できれば、最大でアメリカで使用されている石油の50%を代替できる計算だ。

しかし、セルロース系バイオマスは、分解が難しいだけでなく、エタノールを生成する微生物にとって有害なアルデヒドを含む多くの副産物が生成されることから、バイオ燃料の原料としては使用されていない。

そこで、MITのチームは、エタノール生産微生物である酵母に、アルデヒドをアルコールに変換する酵素を組み込み、さらに酵母の膜を強化することで高濃度のエタノール中で生存できるようにした。その結果、従来の酵母株のエタノール収量より80%向上し、トウモロコシエタノールに匹敵するレベルまでエタノール生産量を増加できた。

この酵母は、スイッチグラス(雑草の一種)、麦わら、コーンストーバー(葉や茎などトウモロコシの非食部)など5種類のセルロース系バイオマスで、エタノールの高収率化が可能だった。

研究チームはさらに、エタノール以外にも、アルデヒドからバイオプラスチックの前駆体である乳酸を生産する酵素を組み込むことに成功した。この結果は、バイオディーゼルやバイオプラスチックなど他の物質の生産にも、今回の手法が応用できる可能性を示している。

MIT化学工学部のStephanopoulos教授は、「現在、私たちはほとんどの種類の生産経路に追加できる耐性モジュールを持っています。目標は、この技術を重油やディーゼル燃料、ジェット燃料などの生産に適した他の物質に拡大することです」と、述べている。

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