ミルクプロテインから過酷な環境で優れた性能を発揮する発泡プラスチックを開発

Published Jun 10, 2021

スウェーデン王立工科大学(KTH)は、ホエイプロテイン(乳清タンパク質)から高性能な発泡プラスチックを開発した。この発泡プラスチックは、石油を原料とする一般的な熱可塑性の発泡プラスチックよりも極めて優れた耐熱性を有している。ろ過、断熱、吸水など過酷な環境下でのタンパク質発泡材料の利用の道を開くものであり、自動車用触媒、燃料フィルター、包装用発泡材などへの応用が期待できる。研究成果は、『Advanced Sustainable Systems』誌に、2021年5月21日付で公開されている。

新開発の発泡プラスチックは主な構成要素は、チーズ製造の際に副産物として得られるホエイプロテイン由来のタンパク質ナノフィブリル(PNF)だ。特定の温度とpH条件下で、加水分解したホエイプロテインが自己組織化してPNFとなる。この発泡プラスチックは高温下での時間経過とともに性能を増し、150℃の空気に1カ月間ふれさせた後には、剛性、靭性ともに向上し、優れた耐火性も示した。

多くのタンパク質は水溶性であり、それはタンパク質を主成分とする素材を開発するうえでしばしば問題となる。だが、この新素材は時間経過とともにタンパク質が重合、新たな共有結合ができることで、発泡プラスチックが安定化し、耐水性を有している。

また、通常はタンパク質を分解/融解する界面活性剤や還元剤など刺激の強い物質に対しても耐性を示し、ディーゼル燃料や高温のオイルにも影響を受けない。さらにこの発泡プラスチックは、可塑剤としてグリセロールを加えることで軟質発泡材にも展開できる。

論文の責任著者であるKTHのHedenqvist教授は、「生分解性があり持続可能な素材であるこの材料は、耐火性が必要な過酷な環境下で使用するための有力な選択肢になるだろう」と述べている。

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