- 2024-1-22
- 化学・素材系, 技術ニュース
- Nature Communications, エアロゲル, シリコーン, 京都大学, 低密度多孔体, 柔軟性, 熱伝導率, 省エネルギー材料, 研究, 透明性
京都大学は2024年1月19日、ガラスのように透明でありながら、曲げ変形が可能な低密度多孔体(エアロゲル)の作製に成功したと発表した。エアロゲルは熱伝導率が極めて低い多孔体で、省エネルギー材料として期待されている。しかし、強度が弱く製造時の取り扱いが難しいことが課題だった。研究成果は2024年1月11日、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載された。
エアロゲルは一般的にシリカと呼ばれる二酸化ケイ素(SiO2)や、水酸基を含むシリカゲルから作られる。しかし、同大学の研究グループは2007年、より柔軟なシリコーンを使ってエアロゲルを作れば圧縮しても壊れにくく、変形させても回復が可能なエアロゲルが作製できることを発見した。
今回の研究では、さらに曲げ変形に対する強度を高め、より扱いやすいエアロゲルを作製することを目指した。これまでの研究と同様、シリコーン骨格を作る原料にメチルトリメトキシシランを用い、ゾルーゲル法によってエアロゲルを作製した。
ただ今回は均一な網目構造を形成させるため、非イオン性のブロックポリマー型の界面活性剤のゲル化を促進するための触媒として、有機強塩基を用いた。こうした工夫によって、直径が4〜10nmの繊維状骨格や5〜20nmの細孔をもつエアロゲルができ、高い曲げ柔軟性を持たせることができた。
これまでの作製法で作られたエアロゲルは、直径が10nm程度の球状コロイド粒子が連結した構造で、粒子と粒子の間の連結部が変形によって壊れやすく曲げ変形性が低かった。
また、有機強塩基によって重合反応時のpHが適切に制御できるようになり、より均質性の高い多孔構造となった結果、ガラスのようなクリアな透明性も実現した。
エアロゲルの強度や柔軟性を高める研究は世界中で数多く行われているが、そのほとんどが強度や柔軟性を高めるために透明性や多孔性を犠牲にしている。これに対し、今回の研究では強度や柔軟性、透明性を両立した。
しかし、ポリマーフォームなど他の断熱材と同様に扱えるようにするためには、せん断変形に対する強度や柔軟性を向上させることが必要で、透明性もガラス並みのクリアさには及ばない。研究グループでは今後、さらに柔軟性や透明性の向上に取り組むほか、製造プロセスの改善を図るため、高圧の超臨界流体を使った乾燥プロセスの簡略化にも取り組むとしている。