- 2021-9-5
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- Learning and Instruction, Wenke Möhring, バーゼル大学, 数学能力, 積み木遊び, 空間認識能力, 算数
空間認識能力が高い、つまり物の形状や位置、お互いの位置関係を3次元的に考えられる人は、数学の能力も高いと言われている。特に幼児期にどれだけ空間的な感覚を獲得したかが重要であり、スイスのバーゼル大学の研究者らは、3歳児の空間的なセンスと小学1年生の算数の成績に相関があることを見出した。詳細は、2021年10月号の『Learning and Instruction』に掲載される。
「例えば大人は、小さい数は左に、大きい数は右に表すといったように、数を空間的に考えていることが過去の研究から分かっている」と、論文の著者であるWenke Möhring氏は語る。しかし、幼児期の空間的な論理的思考が、後の数学の学習と理解にどう影響するか調べた研究は少ないという。
そこで研究チームは、バーゼルに住む586人の子どもを対象にした調査データを活用した。その調査は第2言語としてのドイツ語の言語習得に関するプロジェクトの一環として、認知的能力、社会情緒的能力、空間認識能力をテストしたもので、子どもらの文化的背景や社会経済的地位もさまざまだ。空間認識能力を見積もるテストでは、例えば3歳の幼児に、色のついたブロックを見本通りに置いてもらった。こうしたテストを約15カ月の間隔を開けて4回実施し、小学1年生(7歳)の学校成績と比べた。
その結果、幼児期の空間認識能力と学童期の数学能力には強い相関があるということが分かった。空間認識能力の発達曲線から将来の数学能力を予測できるかも調べたが、今回は確認できなかった。空間認識能力がどのように数学能力に影響するのかはまだはっきりとしていないが、数の空間的理解が役割を果たしているのかもしれないと、研究チームは考えている。
「保護者らは、子どもの成長に関して言語機能の発達を重視しがちだが、幼児期の空間認識能力の育成も同様に重要だ」と、Möhring氏は語る。中でも、積み木遊びは、空間認識能力を高めるのにうってつけだという。「大きい」「小さい」「同じ」「上」「下」といった空間的な関係を表す言葉をかけながら、積み木やおもちゃで遊んであげると良いとアドバイスしている。