グリーンな水素製造を行う光電気化学システムを開発

(左)基本太陽電池(右)ミニモジュール

韓国の蔚山科学技術大学校(UNIST)の研究チームが、ホルムアミド系イオンを用いたペロブスカイト(FAPbI3)太陽電池を、Ni箔/NiFeOOH電気化学触媒でシールした水電気分解システムを設計した。効率と安定性が高く工業的規模への拡大が可能なグリーン水素製造手法を考案したものであり、太陽電池として1.23VRHEにおいて22.8mA/cm2の光電流密度と、3日間の日射シミュレーションに対する優れた安定性を示すとともに、水素製造装置として9.8%の太陽光-水素変換効率を実現した。太陽エネルギー利用のグリーンな水素製造技術として、2030年までに工業化が可能と期待している。研究成果が、2024年1月23日に『Nature Energy』誌にオンライン公開されている。

豊富で再生可能な太陽エネルギーを活用し、水を電気分解して水素を得るソーラー水素技術は、グリーンな水素製造として理想的な方法である。特に、簡便な塗布プロセスなど安価な溶液法で作製できるとともに、22%を超える高い光電変換効率を持ち、次世代の太陽電池材料として注目を集めているペロブスカイト半導体を活用したグリーン水素製造が期待されている。だが、ペロブスカイト半導体は、紫外線および熱や湿度に対する脆弱性が知られており、水の電気分解装置と組み合わせるグリーン水素製造技術に向けた大きな課題となっている。

このような限界を打破するために、研究チームは、従来のペロブスカイト半導体(MAPbI3)に用いられてきたメチルアンモニウム系イオンに代わり、紫外線などに対する優れた耐久性が期待され、研究が進んでいるホルムアミド系イオンを用いたペロブスカイト(FAPbI3)に着目して太陽電池の設計を試みた。更に、水電気分解装置と組み合わせる設計において、水との接触面についてニッケル箔を活用したNi箔/NiFeOOH電気化学触媒でシールし、水や湿気に対する安定性も確保した。その結果、太陽電池として1.23VRHEにおいて22.8mA/cm2の光電流密度と、3日間の日射シミュレーションに対する優れた安定性を示すことを確認した。また、複数のFAPbI3太陽電池光陽極を並列に結合した水素製造システムを設計し、9.8%の太陽光-水素変換効率を実現した。最終的に、このシステムを面積123cm2のミニモジュールにスケールアップし、太陽光-水素変換効率として8.5%を実証した。

研究チームは、「グリーンな水素製造における画期的なブレークスルーを達成し、大面積のミニモジュールにおいても従来にない効率と耐久性、工業的規模への拡大の可能性を実証した。ペロブスカイト太陽電池の耐久性に関する課題を克服することによって、実用化に向けた道を切り拓くことができた。更に、将来に向けた工業化研究により、太陽光-水素変換効率が10%を超えるグリーン水素の製造技術として、2030年までの商業化が期待できる」と述べている。

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