- 2021-8-26
- 化学・素材系, 技術ニュース
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大阪大学、凸版印刷、弘前大学、日本ハム、キリンホールディングス、リコーフューチャーズ、リコージャパン、大阪工業大学の研究グループは2021年8月24日、和牛肉の複雑な組織構造を自在に再現できる「3Dプリント金太郎飴技術」を開発し、筋/脂肪/血管の線維組織で構成された和牛培養肉の構築に世界で初めて成功したと発表した。肉の複雑な組織構造をテーラーメイドで構築できるという。
代替タンパク質として植物由来タンパク質と共に期待されている培養肉は、動物から取り出した少量の細胞を培養によって人工的に増やしてつくられる。実用化に向けて研究されているが、これまで報告されている培養肉のほとんどが筋線維のみで構成されるミンチ様の肉で、和牛の“サシ”など肉の複雑な組織構造を再現することは困難だった。
研究グループは、和牛肉の組織構造を設計図にして、3Dプリントによって筋/脂肪/血管という異なる線維組織ファイバーを作製し、それを金太郎飴のように統合することで肉の複雑な構造を再現する「3Dプリント金太郎飴技術」を開発した。これにより、テーラーメイドで肉の複雑な組織構造を構築でき、和牛の美しい“サシ”など複雑な肉の構造を再現できるだけでなく、脂肪や筋成分の微妙な調節ができるようになると期待される。
3Dプリント技術を用いて筋/脂肪/血管という異なる線維組織を安定に作製するためには、分化誘導の際に起こる収縮を抑えることが重要であった。研究グループは、体内では“腱”が筋肉を支えていることに着目し、腱の主成分であるI型コラーゲンで「人工腱組織」を作製し、そこに各線維組織を結合させることで、線維組織が安定に作製できるようになった。
テーラーメイドで望みの構造を有する培養肉を生産できるようになるため、将来のタンパク質危機に対する解決策のひとつになると考えられる。これまでの食肉生産は、大量の穀物や水、広大な放牧地を確保するための森林伐採、家畜の糞尿やゲップなどのメタンガスに起因するオゾン層破壊などを懸念する声があるが、これらの軽減などにも貢献できるという。
培養肉は牛の成長と比較して極めて短時間で得られるため、より効率的に生産できる。今後、3Dプリント以外の細胞の培養プロセスも含めた自動装置を開発できれば、場所を問わず、どこでも培養肉を作製でき、SDGsへの大きな貢献が期待される。
なお、本研究はJST未来社会創造事業の「持続可能な社会の実現」領域 探索研究「組織工学技術を応用した世界一安全な食肉の自動生産技術の研究開発」の一環として行われた。