米粒2つ分の重さでもエネルギー密度は従来の4倍のマイクロバッテリー製造手法――保護パッケージ不要の新設計

米粒2つ分の重さでありながら、大きく重いバッテリーと同等のエネルギー密度を持ち、保護パッケージ不要のマイクロバッテリーを製造する方法が開発された。この研究はペンシルベニア大学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、米Xerion Advanced Battery Corpによるもので、2021年7月19日付で『Advanced Materials』に掲載された。

無線対応の電子機器はますます小さくなり、より多くの場所で使用されるようになってきている。それに伴って、バッテリーはより少ないスペースでより多くの電力を蓄えられることが求められている。また、ウェアラブルデバイスやロボットといった形でモバイル化も進んでいるため、バッテリーを日常生活での衝撃に耐えられるものにする一方で軽量化もする必要がある。しかし、バッテリーを小さくするにつれて、エネルギー密度を向上させることは指数関数的に難しくなる。困難である理由の1つに、バッテリーに必要な実装面積のうち、より多くの部分を保護用パッケージに割かなければならないことが挙げられる。

そこで、今回の研究では、最小サイズでもエネルギー密度を最大限に高めるマイクロバッテリーの新しい製造およびパッケージ方法を提示した。重要な開発ポイントは、新しい種類の集電体とカソードだ。これらはエネルギーを貯蔵する材料の割合を増やし、同時に保護シェルとしての役割も果たす。

特に集電体は、電子伝導体としてだけでなく、バッテリー内へ水や酸素が侵入しないように防ぐ非導電性の保護パッケージとしての役割もあり、1つで2つの役割を果たす。これにより、通常はバッテリー内部の繊細な化学物質を保護するために使われている非導電性パッケージの必要性が減るので、スペース効率が従来より上がり、同様の大きさで、現在の最新のマイクロバッテリーと比較して4倍のエネルギー密度が得られた。

また、研究チームは、イオンと電子の高速輸送が可能で厚みのある電極を製造する新しい方法も開発した。有用な量の電流を流すためには十分な速度で反応しなければならないため、マイクロバッテリーは従来、薄い電極を必要としてきた。電極が薄いと、より多くの電子やイオンが電極を通って素早く移動できるからだ。しかし、その代償として、エネルギーを蓄積する化学物質の量を少なくすることになったり、製造困難な複雑な設計になったりする。

従来のカソードは、粉砕した粒子をまとめて圧縮して作られていたため、電極間のスペースが大きくなり、イオンがバッテリー内を移動する際の速度を遅くするランダムな内部配置になっていた。これに対し、研究チームの方法では溶融塩の槽から直接カソードを析出させるため、従来のカソードと比べ、多孔性や空隙がほとんどないという大きな利点がある。これによりリチウムイオンは、カソードを通過してデバイスに到達するまで、最も速く、最短ルートで移動でき、高いエネルギー密度を維持しながらマイクロバッテリーの電力密度を向上させることができる。

この再設計された部品は、イオン輸送が非常に効率的であるため、接続したデバイスに電力を供給するために必要な速度を犠牲にすることなく、エネルギーを蓄積する化学物質の量を2倍にできるほどの厚さにすることが可能だ。

新しいパッケージと組み合わせることで、マイクロバッテリーは米粒2つ分の重さでありながら、大きさが100倍のバッテリーに匹敵するエネルギーと電力密度を持つようになる。

このマイクロバッテリー設計は、空を飛ぶマイクロロボットの小型化や、埋め込み型医療機器の耐用年数を伸ばすことに寄与し、さらにはモノのインターネット(IoT)にとってこれまでは不可能だったさまざまなデバイスへの道を開くものだ。研究チームは今後、性能をさらに向上させるために調整可能な化学的および物理的特徴の研究を続けるとともに、この新しい電源を利用したウェアラブルデバイスやマイクロロボットを作っていく予定だ。

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