微生物の代謝を利用――排水から電力を生む「微生物燃料電池」を開発

Copyright @ Yu Huang and Xiangfeng Duan Artist’s image of a microbial fuel cell with efficiencies boosted by silver nanoparticles

微生物の代謝機能を利用して排水中の有機物を電力エネルギーに変換する微生物燃料電池(MFC)は、環境維持の観点から発電や排水処理の分野で注目されている。UCLAの研究チームは、微生物燃料電池の電力生産効率を大幅に向上させる技術を開発した。研究成果は、『Science』誌に2021年9月17日付で公開されている。

自然界において、バクテリアは有害な化学物質を分解し、地下水の汚染を除去している。今回研究チームは電力を生産する微生物として、酸素濃度に関係なく土壌、廃水、海水などであらゆる環境で増殖でき、エネルギー生成能力について広く研究されているShewanella(シェワネラ)属の細菌Shewanella oneidensisを使用した。

微生物燃料電池は、燃料となる有機物の溶液にアノード(負極)とカソード(正極)を接続し、アノード上で成長した微生物が有機物を分解したときに発生する電子を回収する仕組みだ。しかしこれまでの微生物燃料電池では、実用化できるほどの電流を得ることができなかった。微生物の膜を通り抜けてアノードに到達することができる電子が少ないためである。この電子伝達の効率が上げることが、実用化に向けた大きな課題だった。

そこで研究チームは、還元型グラフェン酸化物で構成された電極に銀ナノ粒子を加えた。バクテリアは有機物を分解した際に発生する電子で、ナノ粒子から放出された銀イオンを銀ナノ粒子に還元して細胞内に取り込む。バクテリア体内に入った銀ナノ粒子は微細な送電線の役割を果たし、効率的に電子がアノードに回収される。

電荷抽出効率が大幅に改善された結果、生成した電子の80%以上を外部回路に出力でき、最大電力密度0.66mW/cm2の電力を生産した。この値は、従来の微生物燃料電池の最高記録を2倍以上も上回っている。

今回の研究は、微生物燃料電池の開発に大きな前進をもたらす成果であり、実用化に向けた道を切り開く可能性が示された。

関連リンク

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る