肌や衣服に貼りつける圧力センサーを開発――パーキンソン病の進行度モニターに応用

Photo University of Groningen

オランダのフローニンゲン大学の研究チームは、柔軟なポリマーを炭化したカーボンナノファイバーから、肌への貼り付けや繊維への縫い付けが可能な高感度のセンサーを開発した。このセンサーは人間の皮膚のように圧力を感知し、体の位置や動作を測定できるため、パーキンソン病の進行度の測定やアスリートの関節の動きを検知したりするのに利用できるという。研究成果は『Nature Partnership journal (npj) Flexible Electronics』に、2021年10月14日付で公開されている。

研究チームは、これまでも自然の仕組みから着想を得て、さまざまなセンサーを開発してきた。この人間の皮膚を模倣したセンサーの材料には、エレクトロスピニング(電界紡糸)法により作製したポリアクリロニトリル(PAN)ナノファイバーを炭化したものを使用している。この繊維にはピエゾ抵抗効果があり、伸張すると導電性が変化する。繊維を柔軟なPDMAエラストマーに垂直に埋め込むことでセンサーとして機能する。エレクトロスピニング法で作製したナノファイバーは、布と同じように素材を縫い合わせられるため、電極として機能する導電性の糸として利用できる。衣服や手袋に組み込んだり、関節にパッチとして貼り付けることで、屈伸運動や圧力を感知できる。

論文では、このセンサーの応用面に焦点を当てている。研究チームはセンサー付きの手袋を作り、指の動きや指先の圧力を実際に測定した。手袋を着用すると、手で触ったときと同じように物の硬さを伝えることができる。そのためこのセンサーは、義手への応用も考えられる。また、多くのトップアスリートが筋肉の活動を測定する電極付きのウェアを利用しているが、このセンサーを利用すれば、関節や呼吸などの体の動きも記録できるという。センサーは洗濯できるよう、現在改良中だ。

さらに、医療面での応用についても研究を進めている。パーキンソン病患者を対象に、靴底や膝などの関節にセンサーを取りつけて、時間経過に伴う歩行の悪化についてモニタリングする試験を実施している。パーキンソン病患者は転倒する直前に歩幅が小さくなることがわかっており、歩幅が小さくなったときにセンサーが感知して警告することができる。すでにイヤホンを用いて歩行速度や歩幅について指示を出すシステムを使用している患者もおり、近い将来このセンサーが患者の歩行の補助に役立つようになるかもしれない。

このように柔軟性や伸縮性に富み、縫い付けや皮膚への貼り付けが可能なセンシング材料は、スマートファブリックやソフトロボティクス、健康モニタリングデバイス、医療用デバイスなどさまざまな分野におけるセンサーへの応用が期待できる。

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