人体から摘出した肝臓を1週間保存できる装置「Liver4Life」を開発

スイスWyss Zurich傘下のプロジェクトチームが、2020年1月13日、チューリッヒ大学病院、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)、チューリッヒ大学の協力の下、体外で人間の肝臓を1週間保存し再生させるかん流装置を開発したと発表した。

肝臓治療の現場では、3つの段階からなる肝臓再生のための新しい治療方法の開発が進んでいるという。まず、患者の肝臓から健康な部分を少量、外科的切除し、次に、切除した部分肝を体外のかん流装置で十分な大きさに達するまで成長させる。最終段階で、残っている病変部分を切除しながら、第2段階で成長させた再生肝を元の患者に再移植するという方法だ。

しかし、既存のかん流装置で肝臓を保存できる時間は12時間程度で、体外で肝臓を成長再生させるには時間が足りなかった。そこで、本研究では、体外での肝組織の生存能力を最大5日間まで延ばし、肝組織の成長を可能にすることを目指したという。

具体的には、肝臓に必要な栄養素と酸素を供給し、成長を観察すると同時に、肝組織の機能的能力を評価するシステムを持ったかん流装置の開発に取り組んだ。4年以上に渡る開発プロジェクトの結果、新しいかん流装置「Liver4Life」が発表された。

Liver4Lifeは肝臓を37℃に保ち、酸素が充満した血液を送り込む装置のチューブにつなげて、肝臓から古い血液を取り除く。除去された血液は、腎臓のように老廃物を除去するフィルター透析システムを通過する仕組みになっている。このLiver4Lifeを利用して、損傷した人間の肝臓を体外で1週間保存し機能を温存できたという。

この技術の研究が進めば、以前は手術不能だった肝臓がんの患者も外科的切除できるようになるという。さらには、患者が自分自身の肝組織を使う自家移植をすることで、生涯に渡る免疫抑制や免疫抑制に付随する重度の副作用といった問題も解決されるとしている。

この新しい治療方法の取り組みは、臓器移植が唯一の治療方法である末期の慢性肝疾患に対する肝移植にも応用できる。健康なドナー肝を2分割してかん流装置で成長させ、移植可能な臓器を複数作ることも可能になるという。

このような方法により、提供できる臓器が増加し臓器不足の緩和にも役立つと期待される。

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