栗田工業は2022年1月20日、排水中の有機物を電気エネルギーに変換する微生物発電セルを開発し、電力消費、CO2排出削減に貢献する「微生物燃料電池」の実用化に向けたスケールアップに成功したと発表した。実排水での適用評価を開始し、微生物燃料電池を組み込んだ排水処理装置の実用化を目指す。
工場の排水は、周辺環境に影響を与えないレベルの水質に処理し、下水道や河川、海域に放流されている。しかしながら排水処理に用いられることが多い活性汚泥法は、電力消費や余剰汚泥(廃棄物)の処理や処分に伴うCO2排出量が大きく、その削減が課題となっている。
発電菌と呼ばれる微生物の働きで、排水中の有機物を分解処理し、汚泥となっていた有機物を電気に変換する微生物燃料電池は、排水を創出した電気で処理すると同時に、CO2排出量を削減できることから、こうした課題解決に向けて注目されている。しかし、排水処理効率や発電効率、性能の長期安定維持、実規模サイズへのスケールアップなどに課題があり、実用化できていなかった。
同社は、水処理分野の知見を基に開発を進め、電池の構成に好適な材質を選定し、それらを組み合わせた装置形状や構造を最適化。実用化に向け、日清紡ホールディングスと共同で、実規模サイズへ微生物発電セルをスケールアップした。CODCr除去速度20kg/m3/d、発電量 200W/m3という実規模サイズでは他に例のない世界最高レベルの性能を達成。数年以内でのCO2排出量実質ゼロの排水処理を目指す。
また、同社は微生物燃料電池を中心とした排水処理の装置構造、運転方法等に関して、これまでに10件以上の特許を出願。実排水への適用評価の開始によって、さらなる性能を改善を目指す。今後は、微生物燃料電池を組み込んだ排水処理装置を実用化し、持続可能な社会に貢献する。