持続可能なボース・アインシュタイン凝縮により、連続発振の原子レーザーを可能に

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オランダのアムステルダム大学が、連続発振の原子レーザーを作り出したと発表した。従来の原子レーザーは非常に短い時間しか機能しなかったが、今回開発した原子レーザーは本質的には永久に作動するという。同研究成果は2022年6月8日、「Nature」に掲載された。

自然界に存在する粒子には、フェルミ粒子とボース粒子という2つの種類がある。フェルミ粒子は、電子やクォークのような粒子で、私たちを作っている物質の構成要素だ。ボース粒子はフェルミ粒子とは性質が大きく異なる。最もよく知られた例は、光の可能な限り最小量である光子だ。

ボース粒子が特別なのは、それらすべてが同時にまったく同じ状態になれる点だ。より専門的な用語で表現すれば、コヒーレントな波に凝縮することができる。凝縮が物質粒子に起こるとき、その状態を「ボース・アインシュタイン凝縮(BEC)」と呼ぶ。BECは原子レーザーの基礎となる概念であり、市販のレーザーがコヒーレントな光の波を使っているように、コヒーレントな物質波を使って原子レーザーを作ることができる。

しかし、物質が熱くなると、構成する粒子が揺れ動き、複数の原子を同一状態として振る舞わせることは実質不可能になる。 絶対零度の100万分の一程度(摂氏でいえば-273度程度)の極低温でのみ、BECのコヒーレントな物質波を形成する機会が作れる。

1997年に、物理学の実験室で最初のBECが作られ、原子レーザーを作る可能性が開かれた。しかし、初期の原子レーザーは非常に短い時間しか機能せず、物質波のパルスを発生させることはできたが、パルスを放った後、次のパルスを放つ前に新しいBECを作らなければならなかった。BECは非常に不安定で、物質を極低温にするために使用するレーザー光が当たると急速に崩壊し、コヒーレントに持続させる方法がなく、25年以上も原子レーザーの連続発振が達成されないままであった。

研究チームは、連続したBECを作り出すという長年の課題を単純なアイデアで解決した。従来の研究では、原子をすべて1カ所で徐々に冷却していた。対して同研究では、冷却のステップを時間的ではなく空間的に広げた。連続した冷却を進めながら原子を移動させるのだ。最終的に極低温の原子が実験の中心部に到達し、コヒーレントな物質波に凝縮する。そして、原子が使われても、新しい原子がすでにBECに補充されているため、本質的には永久に持続したBECが作成可能となる。

研究チームの次の目標は、物質波からのビーム出力を安定させることだ。レーザーが永遠に作動するだけでなく、安定したビームを生み出せるようになれば、技術的に実用化を妨げるものは何もなくなる。物質レーザーは、通常のレーザーと同様に、科学技術において重要な役割を担う可能性があるという。

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