- 2022-12-9
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- AI, Matter, Sihong Wang, アルゴンヌ国立研究所, ウェアアラブルデバイス, シカゴ大学プリツカー分子工学部, シリコンチップ, ニューロモーフィック・コンピューティング, 医療用センサー, 学術, 心電図(ECG)
柔軟性のあるウェアアラブルデバイスは日常的に利用されるようになりつつあるが、まだ多くの潜在的な可能性を秘めている。例えば、皮膚のような医療用センサーが実現すれば、常に健康状態をモニタリングし、診断することが可能だ。日常的に身に着けることで、明らかな症状が現れる前に、心臓病やがんなどさまざまな疾患の兆候を検出できる可能性がある。また長期的に継続して個人の健康情報を蓄積することで、それぞれの健康状態を踏まえた健康診断が可能になる。
このような医療用センサーを実現するために、アルゴンヌ国立研究所とシカゴ大学プリツカー分子工学部を中心とする研究チームは、AIを活用した医療用の皮膚型ウェアラブルデバイスの開発に取り組んでいる。今回研究チームは、シリコンチップの代わりとなるような伸縮性を持つチップを開発し、AIと組み合わせて心電図(ECG)信号を見分けるデバイスを作製した。研究成果は、『Matter』誌に2022年8月4日付で公開されている。
高性能な皮膚型医療用センサーを作製するには、膨大な量のデータを収集し、処理する必要があるだけでなく、小型化、低電力化も必要だ。そこで研究チームは、脳の働きを模倣したAI技術であるニューロモーフィック・コンピューティングに着目した。伸縮性のある材料との相性がよく、他のAIと比べて消費電力が少なく、高速で動作するという利点がある。
また、伸縮性のある材料に電子機器を組み込むという課題に対しては、プラスチック半導体の薄膜と伸縮性を有する金ナノワイヤー電極を組み合わせて、皮膚のような伸縮性を持つニューロモーフィック・チップを開発することで解決した。一般的な「硬い」電子機器に用いられている伸縮性のないシリコンチップの代わりとなるものだ。開発したチップは、2倍以上伸ばしても亀裂が生じることなく問題なく機能した。
これらの技術を利用して、心電図信号を見分けるデバイスを試験的に作製した。健康な心電図信号と健康上の問題を持つ4種の心電図信号を用いて訓練したところ、訓練後は95%以上の精度で心電図信号を正しく識別することができた。
材料特性をより深く理解するためにアルゴンヌ国立研究所のビームラインで行ったプラスチック半導体の解析では、2倍に伸ばしたときに構成分子がどのように再編成するのかを分子レベルで明らかにした。今後、装置の輝度が最大500倍まで向上する計画があり、さらに詳細な分子レベルでの研究が可能になる予定だ。
シカゴ大学助教でアルゴンヌ国立研究所の研究員を兼任しているチームリーダーのWang氏は、「いくつかの点でさらなる開発が必要ですが、私たちのデバイスは誰もがより効果的かつ頻繁に健康状態を知ることができるゲームチェンジャーになり得るでしょう」と述べている。
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