水と電気で駆動し、CO2排出量を削減する化学合成システムを開発 横浜国立大

横浜国立大学は2023年1月19日、東京工業大学と共同で、プロトン交換膜(PEM)型電解リアクターで環状ケトンを電気化学的に還元し、ジアステレオ選択的に環状アルコールを合成することに成功したと発表した。環状アルコールは香料や医薬品の中間体として利用されている。化学産業は高温や高圧による合成で大量の二酸化炭素排出が課題となっているが、この方法は水と電気で駆動する。研究グループは排出量を抑えるための「化学反応の電化」につながる新技術だとしている。

研究グループは、二酸化炭素排出量を抑えながら環状アルコールを合成する方法を確立するため、ジアステレオ選択的な環状ケトンの電解還元に着目。PEM型電解装置を用いることで、環状ケトンを立体選択的に環状アルコールへ還元することに成功した。触媒を検討した結果、ロジウム触媒を用いた際に極めて高い立体選択性と電流効率で目的とする反応が得られることを発見。オペランド赤外分光に基づく解析で、ロジウム触媒は環状ケトンを立体選択的に還元しやすい吸着モードを与えることが明らかになった。

また、固体高分子電解質電解装置を用いた有機電解合成では初となるグラムスケール(5g)での反応にも成功した。

これによって、4-tert-ブチルシクロヘキサノンから対応するシス体アルコールを98%の立体選択性で還元。これは、原料に比べて52倍高価な生成物を電気エネルギーと水を用いて合成したことになり、システムの極めて高い耐久性、生産性、経済性を実証できたとしている。

今回の成果を受けて、研究グループは現在、固体高分子電解質電解装置を利用して、さまざまな有機電解合成反応の実証とライブラリー化に取り組んでいる。技術の実用性を高めるため、反応のスケールアップや長時間運転にも取り組んでおり、固体高分子電解質電解によるファインケミカル合成の実用化を目指している。

今回の研究成果は米国化学会の雑誌ACS Energy Letters(オンライン版)で2023年1月18日に公開された。

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水を原料とし電気で駆動するグリーンな化学合成システムを開発

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