火星に45日で到達可能――先進的な原子力推進システムコンセプトを提案

Credits: Ryan Gosse

新しい原子力推進システムコンセプトによると、有人ロケットがわずか45日間で地球から火星まで移動可能だという。NASAが2023年の革新的先進コンセプト(NAIC:NASA Innovative Advanced Concepts)のフェーズIに採択した14件のうちの1つに、火星への高速移動を可能にする原子力ロケットエンジンのコンセプトがある。この新コンセプトは、NASAが2023年1月10日のブログ記事で紹介しているように、ウェーブロータ・トッピングサイクルを使用する核熱推進(NTP)と原子力電気推進(NEP)を組み合わせたバイモーダル原子力推進システムだ。「New Class of Bimodal NTP/NEP with a Wave Rotor Topping Cycle Enabling Fast Transit to Mars」と題されたこのアイデアは、フロリダ大学のRyan Gosse教授らによって提案された。

NTPは、太陽系における有人ロケットに適した推進技術と認識されている。最先端のNTPサイクルは、NERVA (Nuclear Engine for Rocket Vehicle Application. 注:1972年に終了したNASAの核ロケットエンジンプログラム)の技術をベースにしており、比推力(Isp:推進剤1kgを使って推力1 kg=9.8Nを発生し続けられる時間)は化学ロケットの2倍となる900秒が実現可能だ。しかしNTPには、高いデルタVが必要とされるミッションに対して、初期質量と最終質量の比を高く取れないという問題ある。一方、NEPはIspが10000秒以上と非常に高いが、推力が低い。また電源が必要なため、熱エネルギー変換効率が低い宇宙空間での熱除去という問題もある。

今回のコンセプトによると、ウェーブロータ・トッピングサイクルを搭載することにより、NERVA技術のNTP推進と同等の推力を保ったまま、1400〜2000秒のIspが可能となる。さらに、NEPサイクルと組み合わせることで、ドライマスの追加を最小限に抑えながら、Ispを1800〜4000秒まで高めることが可能だ。

Gosse教授は、このコンセプトが実現すれば火星までの有人高速移動が可能となり、太陽系の探索に革命をもたらすとしている。

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