引っ張りに強いカーボンナノチューブの構造を特定――軽量で高強度な構造材料の実現に一歩前進 名大ら

科学技術振興機構(JST)は2019年7月10日、JST戦略的創造研究推進事業において、名古屋大学や愛知工業大学らの研究グループが、多様な構造を持つカーボンナノチューブの中で引っ張りに強いナノチューブの構造を突き止めたと発表した。

炭素原子だけでできた、太さ1~数10ナノメートル、長さ数マイクロ~数ミリメートルのチューブ状の物質であるカーボンナノチューブは軽くて丈夫な物質で、宇宙エレベーターを含め、巨大な構築物や燃費の良い輸送機器を実現する構造材料物質として期待されている。しかし、引っ張りに対する強さ(引張強度)が試料ごとに大きくばらついており、どのようなチューブが強いのかは分かっておらず、構造がきちんと分かった単層カーボンナノチューブの系統的な引張強度の測定の実現が待ち望まれていた。

今回の研究では、炭素の並び方(幾何構造)の決まった単層カーボンナノチューブの引張強度の直接測定に世界で初めて成功した。研究グループは最終的に幾何構造が異なる16本の単層カーボンナノチューブの引張強度の測定に成功し、直径が小さい「近アームチェア型」と呼ばれる構造のカーボンナノチューブが高い引張強度を持つことを突き止めた。さらに実験結果の解析から、幾何構造と引張強度に強い相関があることが分かり、その関係式を見いだした。

今回の研究成果は、カーボンナノチューブの引張強度を決める要因を世界で初めて明らかにしたという基礎科学的な意義に加え、カーボンナノチューブを用いた強くて軽い構造材料の実現に向け明確な指針を与えるものとしている。

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