- 2023-3-16
- 技術ニュース, 機械系
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情報通信研究機構(NICT)は2023年3月15日、住友電気工業と共同で、標準外径(0.125mm)のマルチコア光ファイバでは世界最多のコア数となる結合型19コア光ファイバを開発し、毎秒1.7ペタビット、63.5kmの伝送実験に成功したと発表した。標準外径マルチコア光ファイバの伝送容量の世界記録達成に加え、毎秒1ペタビット級の伝送実験の最長距離も更新している。
非結合型マルチコア光ファイバは大容量化に、マルチモード光ファイバ伝送は長距離化に課題を抱えている。結合型マルチコア光ファイバは、MIMOデジタル信号処理による干渉除去を前提に、これらの課題を打破する光ファイバとして着目され、次世代の長距離大容量伝送技術として研究開発されている。しかし、高精度なコア配置が必要なため、標準外径の結合型マルチコアファイバのコア数は最大でも12コアだった。
今回、結合型19コア光ファイバを共同開発し、毎秒1.7ペタビット、63.5km伝送に成功。コアの構造と配置を最適化しており、標準外径で世界最多コア数を達成しながら、光信号の経路ごとの伝搬特性の差を抑制するランダムな結合に成功した。住友電工が標準外径の結合型19コアファイバの設計と製造、NICTが伝送システムの構築を担当している。
結合型マルチコアファイバは、コアごとの伝送性能の評価が信号干渉のためできない。同時に全コアの信号を受信し、一括でMIMO処理による復調、評価する必要があるため、NICTは、19コアの信号を同時に並列高速受信する光伝送システムを構築。商用の波長帯域(C、L帯)と偏波多重64QAM信号を用いて、伝送距離63.5kmで合計毎秒1.7ペタビットの伝送容量を実証した。また、光信号の経路ごとの伝搬時間の差が小さく、大幅に信号処理負荷(消費電力)を軽減できる。
今回の成果は、大洋横断等の1万km級伝送では、マルチモード光ファイバ伝送方式に比べ、大幅に必要となるMIMOデジタル信号処理の負荷(消費電力)を低減できる可能性を示している。
Beyond 5G後は、大容量の通信インフラに支えられたサイバーフィジカルシステムが望まれているが、情報通信に伴う電力消費の増加を最低限にとどめ、環境負荷を抑える必要がある。今回開発された結合型19コア光ファイバは、長距離用伝送媒体として最も有望な候補の一つとして位置付けられる。
今後、より長距離での伝送評価を実施する。同時に、波長帯域の拡張による大容量化や結合型19コア光ファイバに対応したデバイスの開発、スイッチング等の要素技術の検討を進めていく。