- 2017-12-4
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Alan Dalton, Langmuir, Matthew Large, サセックス大学材料物理学科, タッチパネル, 酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)
イギリス、サセックス大学材料物理学科のAlan Dalton教授と共同研究者のMatthew Large博士は2017年10月25日、銀ナノワイヤーとグラフェンを組み合わせたタッチパネルを開発したと発表した。従来のタッチパネルよりもフレキシブルかつ有害物質を使用せず、ローコストで製造できるものだ。この研究成果は『 Langmuir』に論文「Selective mechanical transfer deposition of Langmuir graphene films for high-performance silver nanowire hybrid electrodes」として掲載されている。
スマートフォンなどのタッチパネルの透明導電膜には、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)が用いられている。このITOは、レアメタルのインジウムを使用するためコストが高いうえ、近年では製造時の健康被害など安全性の問題も指摘されている。なによりスマートフォンのタッチパネルが脆く割れやすいのは、スマートフォンを落としたことがある人には良く知られた欠点だろう。
Dolan教授らは、ITOの代替として、銀ナノワイヤーと2次元素材であるグラフェンを組み合わせる方法を見出した。研究チームは、グラフェンの原子単層が軽く水に浮くという点に着目した。水に浮かせたグラフェンを、ジメチルポリシロキサン(シリコーンの一種)の「スタンプ」に写し取り、まるで芋版のように銀ナノワイヤーのフィルム上にグラフェンのパターンを形成するというプロセスだ。
Dalton教授は、「これまでも銀ナノワイヤーを使用したタッチスクリーンはありましたが、誰もグラフェンと組み合わせることは思いつきませんでした。銀ナノワイヤーのネットワークにグラフェンを添加することで、その電気伝導性は1万倍のオーダーで向上します。これは高価な銀の使用量を減らしても、同等あるいはそれ以上のパフォーマンスを実現できるということです」と説明する。
そして、「この技術はスケーラブルなため、噴射器とパターン化したローラーを使うことで容易に量産することもできます。応答性が高く、消費電力が少ないタッチパネルが製造できれば、割れやすいスマートフォンの画面は過去のものとなるでしょう」と、実用化に期待をかける。
また共同研究者のLarge博士は、「銀を使用する場合、空気中で水分や硫化水素などに触れると変色してしまうという問題がありました。これについてもグラフェン層が銀を保護するように機能し、変色を妨げる効果があることを見出しました。さらに、この銀とグラフェンのハイブリッドフィルムでは、折り曲げ試験を繰り返しても電気的特性は変化しませんでした」と、完全にフレキシブルなデバイスの開発にもつながる技術の可能性を明らかにしている。
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